もしかして……“採用ミス”と呼ばれていませんか吉田典史の時事日想(3/3 ページ)

» 2010年01月29日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]
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学生時代の評価から抜け出せない人は「採用ミス」?

 三重・愛知県などを拠点に数百社の労務相談に携わる特定社会保険労務士の小岩広宣氏にもうかがった。小岩氏は、新卒で“採用ミス”とレッテルを貼られる人は、学生時代の評価から抜け出すことができていないのではないかと指摘する。

 「学生のころは5段階評価の場合、ある教科で1がついたとしても、ほかの教科で4や5をとることで総合点を高くし、挽回することが可能です。しかし、会社員は1があってはダメだと思いますよ。新卒で入社して数年間は、今後、プロになっていくうえでの入門の段階。ここでは、平均点を高くすることも大切ですが、あまりにひどい点数を取ることも好ましくありません。このような考えで仕事に臨むことができるかどうかです」

 確かに会社の人事評価は一見すると、学生時代の5段階方式と重なるものがあるかもしれない。しかし、実際は小岩氏の指摘するように双方には隔たりがある。これは私の見解だが、評価項目の中で「協調性」で1がつくような人は、職場ではひんしゅくを買っているはず。当然、周囲との人間関係もぎくしゃくしているだろう。そのような中で、ほかの項目の評価を上げることができるのだろうか。それはできないに違いない。決して大学受験のように1人で黙々と勉強をすれば、なんとかなるというものでないのだ。

 小岩氏は、中途採用で入社した人が“採用ミス”と評価を受けないためには、自分の仕事の進ちょく(プロセス)を上司や周囲に理解してもらえるように、タイミングよく見せることを勧めている。

 「上司からすると、プロセスを知ることで教えることもできるのです。中途採用で入社した人は早く成果を出そうと焦ったりして仕事を抱え込んでしまうことがあります。『あの人は何をやっているか分からない』と思われないようにするべきでしょう」

 最後に、小岩氏はこう締めくくった。

 「会社の規模にもよりますが、20〜30代前半くらいまでの人をどう評価し、どのように扱うかは、上司の考えによるものが大きいと思います。極論ですが、辞めさせるというときも、上司の判断が大きいでしょう。これが中高年の管理職層になると、上司の意向だけではなく、経営陣の考えなどにも影響されます。例えば、リストラをする場合などがその象徴でしょうね。若い人はこのあたりを心得て、上司と接するとよいのではないでしょうか」

 これは会社の裏側を知る人の生々しいコメントであり、的をついた指摘であるので、機会をあらためて取り上げたい。ところで、あなたの職場に“採用ミス”の人はいないだろうか。

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