コラム
» 2010年01月26日 13時14分 UPDATE

松田雅央の時事日想:不思議の国ニッポンが、好かれる理由 (2/3)

[松田雅央,Business Media 誠]

 すべての番組が今回のために制作されたわけではなく10年前の古いルポルタージュも含まれるが、これほどまとまった数の日本関連番組が一挙に放送されたのは初めてではないだろうか。番組を制作したドイツ人の視点と日本人の視点は異なっており、だからこそドイツに住む日本人が見ても新しい発見がある。

 水曜日に放送された「会社のための死」は2000年に制作されたルポルタージュだが、通勤時間を節約するためカプセルホテルに寝泊りする会社員の話や、「全国の自殺者が1日100人を超す」など、ドイツ社会とかけ離れた日本の実態が紹介されている。ドイツの労働者もインフレによる賃金の目減りに直面しリストラの不安を抱えているのだが、ストレスの切迫度が違うようだ。日本に存在する多くの社会問題はドイツにも存在するのだが、困窮者を死に追い詰めず救い上げるセーフティーネットはドイツの方が優れている。その差が大きい。

 同じく水曜日の「クリル諸島(千島列島)の男たち」は北方領土海域で生計を立てる日本人とロシア人の漁師の話。ロシアの漁船が密漁して日本の漁港で荷揚げする様子が生々しく映され、ロシア人漁師からは「ロシアの沿岸警備隊に見逃してもらうためワイロを払わなければならない……」などの内情も語られていた。日本にとってはナイーブな問題でもドイツ人は客観的に報じることができる。日本ではあまり放送されない北方領土のロシア人の生活や、岬に街宣車を停めて活動する右翼団体の話など、タブーに縛られない番組作りがされていた。

yd_japan.jpg (出典:日本ウィークのWebサイトより(C)3sat)

「〜道」

 ドイツ人には、エキゾチックな日本の精神世界を垣間見ることができる番組も人気だ。筆者の知人が特に興味を持ったのは火曜日の「日本――マラソン修行僧・京都」。白装束をまとい7年間の修行を続ける僧のストイックな姿が印象的だったという。

 宗教ではないが、ドイツ人の多くが日本の「〜道」に強い関心を抱いている。弓道、柔道、合気道などの武道はすでに広く知られており、私が住む街でも「BUDO Club(武道クラブ)」の師範を務めるのはドイツ人。西洋発祥のスポーツにはない精神修養の考え方や、礼儀を大切にする姿勢、記録更新よりも自分自身を磨き高めることに重きを置く考え方に共感するようだ。

 ちょっと変わったところでは「忍術」の愛好者もいる。「NINJA」はアクション映画などを通して世界中でお馴染みだが、そのイメージは垂直の壁を駆け上ったり空を飛んだり、スーパーマンのような超人であろう。筆者の知人(ドイツ人)は忍術の道場を運営するほど熱心な男だが、本物の忍者は荒唐無稽(むけい)なアクションヒーローではなく、地道に修行を積む実践的な人間であると説明してくれた。

yd_japan2.jpg 柔道の練習風景(武道クラブ)

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