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» 2009年12月08日 08時00分 UPDATE

ジャーナリスト斎藤貴男氏が、メディアを斬る:貧すれば鈍する前に、『毎日新聞』に見習うべきこと (1/3)

購読部数や広告の減少などを背景に、多くのメディアは苦しんでいる。新聞社は記者の給与カットや人員の削減、出版社は雑誌の休刊などが相次いでいるが、どのようにすればメディアは生き残ることができるのだろうか。

[土肥義則,Business Media 誠]

 貧すれば鈍する――。これはジャーナリズムの世界にもいえることで、フリージャーナリストの斉藤貴男氏はこのように批判する。「多くのメディアは本業のジャーナリズムのあり方を変えてしまい、『カネを手にしよう、カネを手にしよう』とばかり考えている」と。

 購読部数と広告の減少などを背景に、多くのメディアは記者の給与カットや人員の削減などに取り組んでいるが、これで十分なのだろうか。今後のメディアのあり方などを、斉藤氏が語った。

斎藤貴男氏のプロフィール

1958年生まれ。早稲田大学商学部卒、英国・バーミンガム大学大学院修了。『週刊文春』などの記者を経てフリーになる。社会・経済・教育など幅広い問題を取り上げ、近年は格差社会や憲法問題についても精力的に発言し続けている。『ルポ改憲潮流』、『憲法が変わっても戦争にならないと思っている人のための本』(高橋哲哉氏との共著)、『教育改革と新自由主義』、『「治安国家」拒否宣言――「共謀罪」がやってくる』(沢田竜夫氏との共著)、『住基ネットの〈真実〉を暴く――管理・監視社会に抗して』、『報道されない重大事』、『メディア@偽装』、『「心」が支配される日』など多数。


※本記事は聖学院大学で行われた講演会(12月2日)で、斎藤氏が語ったことをまとめたものです。

記事か広告記事か、分からない

yd_saitou.jpg フリージャーナリストの斎藤貴男氏

 全国地方新聞社連合会という団体があるのをご存じだろうか。この団体は48の地方紙・ブロック誌、共同通信、電通で作られたもの。なぜこうした団体が作られたかというと、官庁などが出稿する広告を取るためにできたのだ。国は自分たちが行っていることをPRするとき、全国紙に広告を出すことは多いが、地方紙1つ1つにはなかなか出さない。こうした現状に対し、電通は「地方の購読率は全国紙よりも地方紙の方が高い。だから広告は地方紙にも出した方がいいですよ」といった形で営業をかけている。そして電通がとってきた広告は共同通信を通じて、地方紙で掲載しているのだ。

 別にこのシステムが悪いというわけではないが、裁判員制度のPRをめぐって、全国地方新聞社連合会はとんでもないことをしてしまった。最高裁判所は裁判員制度を国民に浸透させたいために、地方紙にも広告を出した。しかしそのときに最高裁判所と全国地方新聞社連合会の間で、こんなことが行われた。単に広告を出すだけではなく、最高裁判所主催のシンポジウムを開き、そのシンポジウムの内容を新聞に掲載する――といったものだ。

 本来、記事を掲載するかどうかは新聞社の自由。しかし最高裁判所は電通に広告料を支払い、その見返りとして記事を掲載してもらう約束をした。これは広告なので、「広告」というクレジットを付けなければならない。しかし紙面に「広告」と書いてあると、読者は「これはカネをもらって書いてある記事だから……」といった感じで、あまり注目して読んでくれないかもしれない。なので地方紙は「広告」というクレジットを付けず、まるで記事のような体裁で掲載した。つまり本当は広告なのに、読者には“記事である”とダマして報道していたのだ。

 また産経新聞大阪本社と千葉日報という新聞社は、シンポジウムを開いたときに“やらせ”を行った。シンポジウムの席でお客さんから質問を受け付けたのだが、そのとき「裁判員制度に肯定的な質問をするように」と、サクラ(質問者)にお金を渡していたのだ。フリージャーナリストの魚住昭さんはこの偽装記事を突き止め、そのことを『月刊現代』(講談社、現在は休刊)などに掲載した。

 この問題は魚住さんが取り上げたが、肝心の新聞業界は黙殺した。新聞だけではなくテレビも報じなかったため、多くの人はこの問題について知る機会がなかった。そして、いまは何事もなかったかのように裁判員制度が進んでいるのだ。

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