本をヒットさせるために……欠かせない書店員のチカラとは相場英雄の時事日想(2/2 ページ)

» 2009年11月12日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]
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重み増す推薦文

 昨今の出版不況の中で、版元各社はプロの本読みをポップやポスターなどの販促グッズのみに活用しているわけではない。最近は書籍広告の中で、書店員を動員した推薦文が大きな比重を占めているのだ。

 ちなみに、先の日経夕刊の記事下には、複数の版元の最新刊広告が載っている。最新刊のあらすじのほか、必ずや複数の書店員のコメント、あるいは感想が掲載されている。こうした広告を制作するのは、「本の目利きである書店員の推薦文のあるなしで、書籍の売り上げが変わってくる」(大手出版社の営業担当幹部)からに他ならない。

 書店員の中には、その目利きの確かさから“カリスマ書店員”として有名な向きも多く、年々その推薦文の重みが増しているのだ。

 具体的には、以下のような段取りが踏まれる。

 書籍刊行の前段階では、著者と編集者が原稿をチェックする「ゲラ」をやりとりする。同じタイミング、または印刷間近のゲラを複数の書店員に送り、あらかじめ感想やコメントを集め、広告に生かすのだ。多数の映画評論家を集め、映画配給会社が試写会を開催するのと構図は一緒だ。これらを集計した上で、新聞広告やテレビCMが制作されている。もちろん、出版社側はどの書店員がどの分野の小説やビジネス書を扱っているか、あるいは各々の好みまで調べた上でゲラを事前送付しているのは言うまでもない。

 著名作家の作品でさえ、昨今は売り上げが芳しくないご時勢。筆者のような駆け出し作家の書籍は、仕事場で座していただけでは間違いなく売れない。

 筆者の場合、推薦文の力を借りているのはもちろんのこと、書籍刊行時には頻繁に各地の書店を回り、顔と名前を覚えてもらえるよう努めている。

 出版不況の中、出版社や書店はあの手この手で売り上げ増を目指している。こんな一面を理解した上で、書店員の推薦文、あるいは作家の作品を手に取ってみていただきたい。

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