フランクフルト空港はどんな「エコ空港」を目指しているのか(後編)松田雅央の時事日想(1/3 ページ)

» 2009年11月10日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 欧州有数のハブ空港「フランクフルト空港」が目指すのは世界に誇る「エコ空港」。前回に引き続き、空港を管理運営するフラポート社環境課長Dr.ペーター・マルクスのインタビューを通し、同社が取り組む持続可能な空港発展のあり方を探りたい。

 →欧州有数の国際空港、フランクフルト空港の環境マネジメント(前編)

フランクフルト空港ターミナル1

空港でEVを選んだ理由

――空港にもCO2削減が求められていますね。

マルクス フランクフルト空港(航空機を除く)が排出するCO2発生源の3分の2は電気です(下図)。ターミナルのショッピングエリアや事務所などが多くの電力を消費しており、古い建物の改修や省エネ技術を駆使してエネルギー利用の最適化を進めています。

 フランクフルト空港は国際空港委員会の「空港の二酸化炭素排出削減認証制度」において、ヨーロッパで唯一「レベル2」と認定されている空港です(4段階。最高はレベル1)。今後、乗降客数と貨物量は増加が見込まれますが、気候保護プロジェクトの一環として2020年までに30%のCO2排出削減(2005年比)を目指しています。

フランクフルト空港のCO2発生源と割合(左、出典:Umweltbericht 2008)、ターミナル2のショッピングエリア (右)

――空港では多数の車両を利用しています。エコカーの導入計画は?

マルクス 空港内を走る車両は3000〜4000台に及びます。特にフォークリフト・牽引車など作業用車両の割合が高く、平均寿命は6〜7年といったところでしょうか。2008年現在約30%の車両が電気自動車(EV)となっており、2015年までにこれを50%まで高める計画です。

――他にもバイオディーゼル、燃料電池車、水素自動車などの選択肢もありますが、EVを選んだ理由は?

マルクス これまで、あらゆる可能性を検討したんですよ。まずバイオディーゼルですが、空港で利用する車両(例えば乗降客輸送用バス)は発進・停車を繰り返すため1回1回の走行距離が短く、スピードも低速です。バイオディーゼルはエンジンが温まった状態でないとうまく利用できないため適しません。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.