講談社の『週刊現代』や『FRIDAY』などで編集長を務めてきた元木昌彦氏は、「ヘアヌード」という言葉の“生みの親”としても有名だ。かつては100万部を超える週刊誌も珍しくなかったが、今では3分の1ほどに低迷している雑誌も少なくない。週刊誌が“元気だった”ころを経験してきた元木氏は、現在の週刊誌ジャーナリズムをどのように見ているのだろうか。
→週刊誌ジャーナリズムの役割とは? 裁判員制度との関係(前編)
――『週刊新潮』は、朝日新聞襲撃事件の実行犯を名乗る男の手記を掲載しました。しかし誤報という形に終わりましたが、その後の対応についてはどのように感じますか?
『週刊新潮』は実行犯と称する男と組んで、読者を騙したわけだから、この問題についてきちんと検証する必要があるだろう。このままウヤムヤにすることは、『週刊新潮』にとっても良くないこと。『週刊新潮』と実行犯と称する男との間で、どういうやりとりがあったのか。なぜ4回にわたって掲載したのか。単に4回掲載して、売り上げを伸ばそうと考えていたわけではないと思う。きちんと検証しなければ、何年たっても「あの新潮の記事は……」と言われ続けるだろう。
例えば講談社は『僕はパパを殺すことに決めた』の件※で、第三者委員会を設けた。しかし新潮社は大誤報を検証する動きがなく、このままでは読者から見捨てられるかもしれない。
――週刊誌の部数は落ちてきています。週刊誌ジャーナリズムが衰退しているから売れないのでしょうか。それとも売れないから週刊誌ジャーナリズムが衰退していっているのでしょうか。
それは難しい問題で、結論が出るわけでもない。特に出版社系の週刊誌は、新聞やテレビが報じないテーマを取り上げてきた。今は、その原点が少し揺らいできているのではないだろうか。
週刊誌の部数が落ち込んでいる要因のひとつとして、「雑誌ってこんなことをしてくれるのか」といった印象が薄れてきていることが、結果的に部数が落ち込んできている要因のひとつだろう。「雑誌はタブーに挑戦する」とも言われているが、そもそも「タブー」とは一体何だろうか。もっとタブーはたくさんあるのではないだろうか。なぜトヨタ自動車やソニーを取り上げないんだ、という指摘もあるだろう。芸能界でいえば、なぜジャニーズやバーニングを取り上げないのだろうか。
週刊誌ジャーナリズムは“本丸”を突かないという体質が、読者にバレてしまったかもしれない。「週刊誌はこういうタブーを破ってくれたんだ」「こんなところにもメスを入れてくれたのか」といったことが読者に分かってもらえれば、まだまだ週刊誌ジャーナリズムが生きる道はあると思っている。
今は自主規制の問題などがあって、週刊誌の勢いがなくなってきている。そうした問題をどのようにして乗り越えていくことができるのか。それが問われていると思う。
――20代や30代の人で「雑誌を読まない」という人が増えてきていると思いますが。
私は大学で教えているが、多くの生徒は新聞も雑誌も読んでいない。特にジャーナリズム系の週刊誌はほとんど読まれていない。ただ私が編集長をしていたころも、学生は週刊誌をあまり読んでいなかった。30代の人にどうやって売っていくか、というのが課題だった。
なので若い人が読まないということが、部数の減少につながっているとは思わない。もちろんインターネットや携帯電話といった存在は大きいと思うが、部数は10年前と比べ3分の1……4分の1ほどに落ち込むのは信じられない数字だ。
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