採用試験の謎を解け!――企業側から見た新卒採用戦略現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”(1/2 ページ)

» 2009年06月09日 07時00分 公開
[森田徹,Business Media 誠]

著者プロフィール:森田徹

1987年生まれ、東京大学経済学部経営学科在学中、聖光学院中高卒。現在、東大投資クラブAgents自民党学生部などのサークルに所属している。投資・金融・経営・政治・コンピュータ/プログラミングに興味を持つ。リーマン・ブラザーズ寄付講座懸賞論文最優秀賞、日興アセットマネジメント主催「投信王 夏の陣」総合個人優勝。主な著書に『東大生が教える1万円からのあんぜん投資入門 』(宝島社)


アイティメディア総務人事部の浦野平也氏

 誠読者のほとんどを占めるビジネスパーソンの皆さまにとっては、“就活”という言葉は遠い思い出の中にあるものだろう。しかし、自分の後輩となる新人がどのように選抜されているのか気になる人は少なくないはず。もちろん、筆者のようにこれから就活戦線に身を投じる大学生にとって、俯瞰(ふかん)的な視点で就職活動を眺めてみることはきっと何かの助けになるはずだ。

 そういうわけで、今回のテーマは「就活というゲームのルールを知ろう」という話。企業側、面接をする側から見たイマドキの就活事情について考えていく。

 人事部門は就活生に何を求めているのか? ES(エントリーシート)や面接で試験官は何を見ているのか? 我々は会社の発しているメッセージを適切に受け取っているのか? 今回の記事がそんな疑問を解決するためのヒントになれば幸いだ。

 今回は複数の就活生や人事担当の方のお話を聞いた上で、アイティメディア総務人事部の浦野平也氏に補足いただいた。だが、もちろん会社の数だけ人事制度はあるはず。総合職採用を想定した流れで一般化して書いてはいるが、その点は留意して読んでいただきたい。

新卒採用の分類と企業の採用戦略

 まず企業の新卒者選考過程を見てみよう。新卒採用の選考は(1)ESによる書類選考、(2)筆記試験、(3)GD(グループ・ディスカッション)、(4)面接、の4つに分類できる。もちろん、企業によっては(1)と(2)が融合していたり、(3)が省略されていたりとバリエーションはさまざまだ。

 これらの過程でどういったふるい落としが行われるかは、各企業の人的資源に対する考え方によって左右されてくる。少しだけ人事の視点に立って、人的資源について俯瞰的に考えてみよう。

 人的資源にもパレートの法則が成り立ち、上位2割程度の“光る”人材、中位6割程度を占める“普通の人”、下位2割程度の“明らかにその企業に合わない人材”に分かれるそうだ。下位2割はどの企業でも必要とはされないのだが、問題は中位6割の扱いである。

 新卒採用戦略を見ると企業は2パターンに分かれ、上位2割の上澄みのみを必要とする“質”重視の企業、組織が巨大なためにある程度の“量”が必要な企業に区分できる。例えば、当初はベンチャー企業で新卒には質を重視した採用方式をとっていた企業でも、事業が大きくなるにつれ、組織に厚みを持たせるため“量”重視の採用方法に転換し、中位6割もすくい取れるような採用方式をとっている場合がある。

就活の“足切り”――書類選考と筆記試験

 上位2割の上澄みのみを必要とする時、ESでは目をひくもの、SPIやGMATといった筆記試験の場合も成績上位者をまずは選抜すれば良い。むろん、ここで言う目をひくものとは、バブル期の一般職のESで流行ったような、キャッチーなフレーズなどを用いたアピール力を問う類のものではない。経歴や資格、文章の論理性など、人事部の定性評価で明らかな異質さが認められた人材が残るのだ。

 これについては「数百と見ていけば上位2割とそれ以外の差が歴然という感じ」(浦野氏)という相対評価でしかないので、文章で明確な基準を示すことはできない。とはいえ、個人的な話をすれば、筆者もサークルの入会者選考などで人を評価しなければいけない立場に立たされることがあるが、確かに上下各2割の層は書類選考の段階で峻別できるものである(さすがにサークルではESだけで落とすことはしないが……)。

 とはいえ、大多数のボリューム重視の大企業が行っている方法はとてもシンプルで、下位2割を落とすためのものである。学歴フィルターが存在する企業もあるだろうが、明らかに客観性や論理性に欠いたESを書いてくる、基本的な“御社の事業内容”さえ理解していないなど、面接をするコストももったいない者を切る“足切り”の過程が書類選考である。

 筆者も就活予備軍なので、「会ってもみないで切るなんてとんでもない!」と思う気持ちは理解できる。しかし、「クリエイティブな仕事をしたいから」「自分のリーダーシップを生かせると思ったから」などといった大衆的な抽象論を何百と読まされる人事部門が鼻白む気持ちも分からなくはない。

 ところで、SPIのような大学入試センター試験レベルの簡単なテストで、果たして人材を選りすぐることができるのだろうか。浦野氏に尋ねると、「『できる』ではなく『できてしまう』」という答えが返ってきた。SPIなどは対策さえすれば容易に点数が取れてしまうのだが、「実は案外みんな点数は取れていない。『対策をする』という意識が働き、結果として点数を上げられるのであれば、ある程度は優秀な人材となれてしまうのが現実」ということだ。漠然と目的意識なくジョブ・マーケットに投入される者でも、そういったところの危機意識の違いで、今後の仕事への姿勢が分かるようである。

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