朝日を襲撃した実行犯、相撲の八百長……。それでも週刊誌が売れなかったワケ集中連載・週刊誌サミット(2/4 ページ)

» 2009年05月28日 08時30分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

袋とじヌードを一生懸命やってきた

 僕が編集長をしているときは、「どうやって売るか」――。それしか考えていなかった。例えば、田原総一朗さんにも対談やインタビューに出ていただいた。そのとき週刊誌の売る技術というのを、編集部ではいつも考えていた。『週刊ポスト』の誌面であれば、読者の方から見てまず左のページが目に入る。田原さんに麻生首相のインタビューをしてもらったときは、必ず麻生さんの写真を左に載せて、田原さんを右に掲載していた。これは基本中の基本だ。

 次にタイトルをどうするか、を考える。田原さんにバンバン追及してもらっても、コンニャク答弁のような答え方であればどうしようもない。原稿を読んでも面白いタイトルが浮かんでこない。そうなれば田原さんの質問タイトルにしてしまえ、となる。「田原総一朗 麻生さんあなたが辞めればGDP1%上がりますよね」といったタイトルにすれば、売れるかもしれない。今は売れないかもしれないが、僕のときはちょっと売れた。編集長のときはこういう技術をずっと考えてきた。

 自分は4年間編集長をしてきたが、雑誌ジャーナリズムをやってきたという記憶はほとんどない。やはり袋とじやヌードを一生懸命やってきた。先ほど「スクープは読者が決める」と言ったが、「これは絶対に売れる」と思ったヌードが大失敗したケースもある。それはアニータ※のヌードだ(会場内笑い)。

※アニータ・アルバラード:青森県住宅供給公社に勤めていた男性と結婚。しかし男性は公社の資金14億円を横領し、逮捕。そのとき、チリに豪邸を建てたチリ人妻として話題になった。

 このヌードを企画したのは僕だった。「とにかくアニータのヌードを撮れば絶対に完売だ。特大号は彼女の袋とじでいくぞ」と言った。しかし、編集部の反応はイマイチだったことが、気がかりだった(会場内笑い)。(アニータに)お金を払ったら読者の反発を招くかもしれないので、とにかく一番安いギャラで“ごっそりいけ”と命じた。そして(カメラマンからは)「バッチリ撮れました」と連絡がきた。「よし、これで完売だ」と思い、あとの特集は“流し”でいい。このように考えたわけだが、まったく売れなかった。

 ある人からは「史上最悪のヘアヌード」とまで言われてしまった。それはすごくショックだった。

 結局は「読者が正しい」のだ。例えば、あべ静江さんが1ミリも脱いでいないような袋とじヌードがあった。それを見た団塊世代の読者は「あの、しーちゃんが……」となり、よく売れた。編集長が独りよがりに「これはスクープだ!」「これがジャーナリズムだ!」と言っても、読者の感覚が乖離(かいり)していては、それはスクープではない。

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