インタビュー
» 2009年05月22日 08時00分 UPDATE

集中連載・週刊誌サミット:なぜ週刊誌は訴えられるようになったのか? (1/3)

『週刊朝日』の山口一臣編集長はこれまで、何度も訴えられてきたが、一度も“負けた”ことがない。かつては記事のクレームに対し、話し合いで解決してきたが、最近はいきなり訴えられるという。その背景には何が潜んでいるのだろうか?

[土肥義則,Business Media 誠]

 大衆向けの情報誌として、1922年に創刊された『週刊朝日』。その後、1カ月遅れで『サンデー毎日』が創刊され、新聞社系の雑誌は日本を代表する老舗週刊誌となった。1950年代には150万部に達したが、その後、出版社系の週刊誌が台頭してきた影響で、ジリジリと部数が減少。ここ数年の実売部数の推移を見てみると、2000年が32万部、2005年が22万部、そして2008年には17万部と低迷している。

 逆風が吹き荒れる週刊誌業界の中で、『週刊朝日』の山口一臣編集長は現状をどのように見ているのだろうか? 5月15日に開かれた“週刊誌サミット”での声を紹介する。

 →編集長は度胸がない+愛情がない……週刊誌が凋落した理由(前編)

 →弾圧を恐がり、“感度”が鈍い編集者たち――週刊誌が凋落した理由(後編)

 →相撲八百長疑惑の記事に4290万円。しかしまだ戦える――『週刊現代』加藤晴之前編集長

すぐに訴訟。“言い訳”を聞こうとしない

yd_yamaguchi.jpg 『週刊朝日』の山口一臣編集長

元木昌彦(司会):『週刊朝日』は『サンデー毎日』や『読売ウイークリー』などと同じように、本体は新聞社。その中で取材活動を続けている。『週刊新潮』が昭和31年(1956年)に創刊したときに『週刊朝日』と『サンデー毎日』はそれぞれ150万部売れていた。しかしその後、出版社系の週刊誌が相次いで創刊され、新聞社系は部数を落としていった。

 山口編集長の編集方針もあるだろうが、最近では司法や検察を検証した記事が印象に残っている。朝日新聞という新聞社の中で、山口編集長はどういった方針で雑誌を発行しているのだろうか?

山口一臣:さきほど田原さんから「編集長は度胸がなくなった」と、お叱りの言葉をいただいた。すいません……正直言って「度胸はないです。萎縮しています」。(萎縮している理由は)さきほどから何人もの方が指摘されているように、私たちは今、2つの大きな脅威にさらされている。

 1つは田島先生が指摘されたように、さまざまな規制と訴訟というものがあるから。もう1つは……これは半分以上、私の責任だが、雑誌を買ってもらえない。つまりお金がないということ。私たちは、この2つの大きな脅威にさらされている。

 訴訟について、さきほど田原さんや佐野さんからも「勝てばいいんだ」「負ける方が悪いんだ」とおっしゃられていた。自慢ではないが、(私は)いくつか訴訟を抱えていて、しかも編集長に就任してから急に訴訟が増えた。しかし、まだ「負け」は1つもない。判決をいただいたものについては、すべて勝った。また勝訴的和解も2つあった。

 『週刊朝日』のスタッフには「訴えられるかもしれない」ということを前提に、「取材をしてください」とお願いしている。週刊誌の仕事を25年くらいしているが、随分世の中が変わったなあと感じている。さきほど申し上げた通り、規制が増えてきたこともあるが、人間関係のあり方が様変わりしている。どういうことかというと、私が駆け出しのころは記事を書いて文句があれば、だいたい電話で怒鳴り込んできた。あるいは会社に押し込んできたり、呼びつけられたりもした。

 私はまだペーペーの記者だったので、デスクの後ろで小さくなって話を聞いていた。そして文句を言って来た会社の人や政治家のところに行って、直談判してきた。喧嘩(けんか)して仲良くなるというわけではないが、そこで新たな関係を築いたり、お互いなんとなくウヤムヤにしたり、話し合いをしたり、貸し1・借り1といった感じで収まっていた。しかし最近では、そういうことはほとんどない。書かれた側が文句を言ってくるケースは、ほとんどなくなった。

 例えば内容証明といった警告文を送ってくるのは、まだましなほう。なぜなら内容証明の内容によって、話し合う余地があるからだ。しかし最近は、いきなり訴訟を起こされる。話し合う以前の段階で、いきなり訴えてくるケースが非常に多くなっている。つまり我々はどういうつもりで記事を書いて、どういう取材をしたかという、“言い訳”を聞こうとしない。すぐに訴えてくるのだ。コミュニケーションのありようが、私の駆け出しのころと比べ、大きく変わったという印象がある。

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