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» 2009年05月08日 19時35分 UPDATE

財務で読む気になる数字:REIT上場から7年半――不動産取引が市場化された意味とは (1/2)

2001年7月に日本の証券市場で取引開始されたREIT(不動産投資信託)。2009年4月28日現在、上場しているREITの本数は約40本、その時価総額も2兆3900億円となるまで成長した。REITが取引できるようになった意味とは何なのだろうか。

[斎藤忠久,GLOBIS.JP]
GLOBIS.JP

斎藤忠久の「財務で読む気になる数字」とは?

グロービス・マネジメント・スクールそしてグロービス経営大学院で教鞭を執る、斎藤忠久氏による新連載。ファイナンスの観点から話題になったニュースを独自の視点で読み解くコラム。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2009年5月8日に掲載されたものです。斎藤氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


 「REIT(不動産投資信託)」が2001年9月に日本の証券市場で取引開始されてから7年半が経過した。2009年4月28日現在、上場しているREITの本数は約40本、その時価総額も2兆3900億円となるまで成長した※。

※ただし、REITの時価総額のピークは2007年5月における約7兆円。その後、金融危機の影響もあり、全世界的に価値が急落、7割近くを消失した。

 通常の投資信託が株式や債券に投資するのに対して、REITはオフィスビルや商業施設などの不動産物件に投資し、その投資資産を引き当てに証券を発行して幅広い投資家に販売される投資信託だ。投資対象の不動産が生み出す収益や、その売買に伴うキャピタルゲインが配当として投資家に分配される。

 REITのリターンとリスク(リターンのバラつきの大きさ)はほかの金融商品と比較され、割安であれば需要が増えて値上がりし、割高であれば売却され値段は下がる。この面では株式や債券と変わるところはない。

国際金融商品となった不動産

 戦後長い間、不動産は右肩上がりに値上がりし、米国カリフォルニア州の面積にも満たない日本国土の時価総額は、そのピーク時には米国全体の土地の時価総額に匹敵するほどであった。地価は、その土地を活用して得られる収益からではまったく説明できないレベルの高い値を付け、土地を持っていれば値上がりするという“土地神話”が生まれた。

 ファイナンス理論からみた土地の価値は、資産として土地を活用して生み出される収益から算出された本来価値(収益をその収益のリスクの大きさに見合った割引率で割り戻して得られる現在価値=収益還元法に基づいた価値)であるはずなのに、その本来的な価値を大きく上回っていたことになる。1987年4月には日経225(日経平均株価)のPERが89.6倍というファイナンス理論では説明できないほどの高水準になったが、1980年代までは土地もバブルにまみれていた。

 さかのぼって明治時代には、農地にかかる税金である地租は、作物の収益(作物の売上高から経費を差し引いた収益)を分子に、金利などを参考にした利回りを分母として割り戻して算出した価格(土地の時価)を基準にして賦課されており、まさにファイナンス理論である収益還元法に基づいて土地の価格が形成されていた。

 第二次世界大戦後の高度経済成長期を契機に、需要の拡大によって土地の取引価格は急上昇し、その結果、説明力を失った収益還元法に代わって、周辺相場を参考とする取引事例法が主流となっていった。1990年の不動産向け融資の総量規制を機に不動産バブルも終焉し、土地の値段は下落の一途をたどり、現在では土地を利用して生み出される収益に見合った価格で取引される時代が再びやってきた。土地も、「保有によるキャピタルゲイン」狙いではなく、明治時代のようにその「利用価値に見合った価格」体系に戻ったわけである。

 現在上場しているREITの利回りは7.32%(2009年4月28日現在、JAPAN-REIT.comによる)と、一時の5%程度に対してかなり高くなっている。これは、金融危機に端を発した不動産不況でREITのリスクが高くなったためである。金融危機が起こる前の利回り水準である5%程度を基準に考えると、年間500万円の収益を生む不動産物件に付く価格は1億円(=500万円/5%)であり、不動産市場では1億円で売買されることになる。

 「その物件をどのように活用したら最も収益が上がるか」という観点から再開発の青写真が描かれ、その物件を最も有効に活用できる、つまり最も高い入札価格を提示できるプロジェクトに落札される。例えば六本木の旧防衛庁の跡地に立てられた「東京ミッドタウン」は、その土地を活用して最も収益が上がると考えられた、商業施設、オフィス、ホテルなどの複合施設の形態で再開発が進行したわけである。

 このように現在では、土地そのものの利用価値に応じた価格が形成され、投資リスクの大きさと利回りとの比較で物件の割高感や割安感が形成され、市場で売買される。不動産も、株式や債券といった金融商品の仲間入りを果たしたわけである。このリスクとリターンのバランスに応じて資金が移動し、割安な(つまりリスクに比べてリターンの高い)物件は需要が増大して値上がりし、逆に割高な物件は値下がりし、リターンとリスクのバランスが均衡するまで物件間での資金移動は続く。

 資金は国内だけでなく国境を越えて移動するわけで、不動産も国際金融商品となった。例えば、銀座の一等地である銀座4丁目の不動産物件のリターンがニューヨークの一等地である5番街の不動産物件に比べて高ければ、資金は米国から日本に流入し、銀座4丁目の土地価格は上昇(リターンは低下)し、日米でリターンが均衡化した時点で国境を越えての資金移動は終了する。これはまさに不動産の金融商品化、グローバル化であり、不動産も資本市場の理論で動くようになったわけである。これが「不動産取引の市場化」が意味するところである。

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