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» 2009年03月13日 17時40分 UPDATE

16連射、ゲームは1日1時間の裏側――高橋利幸氏、ファミコンブームを振り返る(後編) (3/5)

[堀内彰宏,Business Media 誠]

本当に面白いゲームは丸と四角だけでも面白い

 ブームはなかなか作ろうと思っても作れません。漫才師さんの世界で「お客さんが笑っている最中はツッコミやボケをやめたらダメだよ」というのがあるんです。「笑っている最中だともっと受ける、もっと笑いが大きくなる。それをずっと続けることができると大物になるんだ」ということらしいのです。「ファミコンブームもそうだな」と思います。これでもかこれでもかと商品を出したり、遊び方を提供していったりしたのが続いてブームとなったんだと感じてます。

 ただ私としては1つ、「失敗だったな」ということがあります。毎年全国キャラバンをやっていると、“キャラバン小僧”という追っかけさんが出てきました。彼らは、キャラバンが終わったら、翌年のキャラバンのためにアルバイトを始めて、お金を貯めるのです。50カ所以上をキャラバン隊と一緒に回るんです。電車を使って移動して、各地に友達を作って、その友達の家に泊まるんですね。そうするとホテル代がいらないから。そういう彼らってすごくゲームが上手いんですよ。点数も半端じゃないくらい取るんですね。東京大会だとほかにも上手い人がいるのですが、青森とか秋田、鳥取などの地方に行くと、その点数の差というのは歴然なんです。すると「彼らが乗り込んでいく地域で、その地域からの入賞者が1人もいない」という出来事が起こり始めたのです。そのためプロチームと地域を分けて、「どこかの会場で優勝した人はほかの会場では入賞できません、こっちの方に参加してください」というルールを作ったのです。

ah_takahasi.jpg 高橋氏のブログ「16連射のつぶやき」

 PCエンジンが出て、セガサターンが出て、ドリキャス(ドリームキャスト)が出て、プレステが出て、PS2が出てと技術の革新がどんどん進んでいきます。メーカーとしてはピラミッドの上の部分を狙うんですね。「頂点を狙えば、下は付いてきてくれるだろう」と思っているのです。分かりやすく言うと、例えば小学校3年生向けに作ると、小学校3年生より上の人は絶対買ってくれません。対象年齢が低い物って、手を出さないですよね。だから中学校1〜2年生向けのものを作っておくのです、そうすると小学生も手を出してくれるのです、上にあこがれるから。それはハードだけではなく、ソフトでもそうです。

 その典型的な例がシューティングゲームです。『スターフォース』『スターソルジャー』の時にはそんなに難しくはなかったのですが、今のシューティングは(上のプレイヤーに合わせたために)弾が散弾銃のごとく降ってきて、シューティングゲームというジャンルなのに避けゲー(ム)になっているのです。「撃つゲームなのに、なぜ避けなきゃいけないの?」と思うぐらいです。「変な方向に来ている」と私は思っています。あの弾のあられ状態を一般のユーザーが見た時に何と思うか。「俺には無理だ」と当然なりますよね。そうなると、やはり手を出してくれません。だから今、シューティングゲームはダメなんです。できればこういうゲームのジャンルをつぶすようなことはしたくないんですが。でも、今こうなってしまったのは仕方がないので、(ゲームクリエイターの人たちは)これを肝に銘じて、ブームに乗らないゲーム、できるだけ楽しいゲームを目指してほしい。私は会社員なので売り上げが上がってくれないと困るのですが、「売れることだけを考えて、その1つのジャンルをつぶすというようなことまではやってほしくないな」というのが今、過去をずっと冷静に振り返ってみて思うことです。

 見た目のド派手さは、ある程度は必要だと思います。紙芝居より、テレビですよね。紙芝居も時々見るならいいですよ。でも時々見て「いいな」と思うようなものは、やはり売れないんです。時々たしなむ程度になりますよね。でも、ド派手なものばかりに走ってしまうと、「本当に面白いというものからは、かけ離れていくのではないか」と私は思います。ヒットしたゲームはそのベールを全部外していくと、絶対コアの部分で面白い部分が残るんです。ラインフレームであっても、丸と四角だけでも面白いはずなんですよ。「丸と四角がマネキンにならないと面白くない」というのは、「ゲームとしては中途半端だからではないか」と思っています。講演を依頼されてからの数週間、過去を振り返っている時にそうしたことを思い返してしまいました。

 ハドソンに定年があるとしたら、あと10年くらいで私は退職します。(ただ)今出ていってもあまり関係ない、私の仕事は宣伝であって、私が(ゲームを)作っているわけではありませんから。でも、30代くらいまでの方は、これからのゲーム業界を作っていくわけです。「自分の考えたこと、何かでインパクトを与えたい、何かで驚かせたい、何かでビックリさせたい」、それは分かりますが、今一度遊びというのに1回戻ってもらいたい。遊びといってもパチンコなどではなく、昔からある日本の伝統芸、伝承遊びとかに戻って、「何が笑いを生み出すのか」「何が楽しいというものにつながるのか」ということを振り返ってもらって、それをテレビゲームに役立ててもらうのがいいのではないかと思います。そうすることで、もう1回あの1986年のようなブームが起きるのではないかと思います。

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