スターバックスに“死角”はあるのか? ポイントは米国本社との関係山口揚平氏が教える“会社の本質”(2/2 ページ)

» 2008年12月08日 06時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
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 「セルフ型チェーン店の市場が喫茶市場全体の半分まで伸びると仮定し、1兆円の半分の5000億円ほど。ドトールの売上高が700億円、スターバックスが900億円、ほかのチェーンの売上合計が1000億円だとすれば、現在の市場規模は2600億円。もし平均成長率10%ほどのペースで伸びると、セルフ型チェーン業界の市場はあと7年で2400億円増えて、5000億円となり飽和状態になるだろう」と見ている。

スターバックスが抱える3つの問題点

 スターバックスの業績は順調で将来性も見込めるが、落とし穴はないのだろうか。山口氏は「スターバックスを分析する場合、米国本社との関係を無視することはできない」という。スターバックスの資本構成を見ると、米国スターバックス本社(資本管理会社、SCI)とサザビーリーグ(日本の会社)が40%ずつ保有している。そして米国のスターバックスとの契約内容に“問題がある”と指摘する。

 主なポイントとして、山口氏は「ライセンス料、出店ノルマ、利益還元」の3つを挙げている。有価証券報告書によると、スターバックスのライセンス料率は5.5%。「他社と比較すると、ライセンス料率の5.5%は妥当な水準。しかし売上の5.5%が差し引かれるため、これまで以上に競争が激しくなると、収益面での不安がある。また支払手数料(2008年3月)が15億円計上されているが、具体的な内容が分からないのが問題だ」

 2つめの「出店ノルマ」だが、日本と米国のスターバックスの間には「○○年○○月までに、これだけ出店しなければならない」という契約がある。契約内容を見ると、日本での出店数が目標を下回った場合、不足店舗分のライセンス料を米国のスターバックスに支払う必要があるのだ。

 出店目標は2009年3月期までで836店舗。2008年9月末時点で816店舗を構えているため、このペースでいけば目標は達成できるだろう。「しかし出店すればするほど出店ペースは鈍化していく。そこでライセンス料などの契約によって、収益が悪化する可能性が高い」と予測する。

ブルー・マーリン・パートナーズ代表の山口揚平氏

 3つめの「利益還元」については、スターバックスの損益計算書を見れば分かりやすい。例えばコーヒー豆やコーヒーカップなどを、米国のスターバックスから購入しており、2008年3月末時点での取引額は67億円に達している。これに先ほど述べたライセンス料(年間50億円、2008年3月末)が加わり、合計100億円以上の資金が米国本社に流れているのだ。「ここで問題となるのは、こうした契約は大株主であるSCIの考え方によって変更ができるということ。実は日本のスターバックスは本社のコントロール下に置かれているため、スターバックスの株式を保有している個人投資家には交渉力がない。要するに株主の権限が損なわれている」という。

 個人投資家は企業がどれだけ利益を上げているのか、という点に着目しがちだが、それは1つの側面に過ぎない。企業が稼いだお金をどれだけ個人投資家に還元しているか、という点にも注目する必要がある。「外資系の場合、分配・契約構造において、問題があるケースが多い。スターバックスは個人投資家にとって人気のある銘柄だが、実は個人投資家にとって“不向きな銘柄”でもある」と分析した。

 →次回に続く。

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