花と水の楽園の再建を目指して――ハウステンボス(前編) 新連載・ECO建築探訪(1/2 ページ)

» 2008年09月12日 08時00分 公開
[水谷義和,Business Media 誠]

ECO建築探訪とは

環境意識の高まりにともない、少しづつ増えている環境配慮型の建物。環境配慮型の建物には、設計段階から環境に配慮したものと、すでにできあがった建物を環境配慮型に作り変えたものがある。本連載「ECO建築探訪」では、そうした建物が作られた背景、どのような試みを行っているかなどを紹介していく。

水谷義和(みずたによしかず):ウッドノート代表取締役。1995年早稲田大学理工学研究科建設工学(都市環境)修士課程修了後、竹中工務店に入社。東京ドームシティLaQua(ラクーア)や汐留芝離宮ビルディングなど省エネ施設の企画、設計に数多く携わる。2003年には、世界ガス会議・環境調和型都市デザイン国際コンペで、日本代表選考コンペ優秀賞受賞。2005年に竹中工務店を退職し、竹中工務店の同僚と2005年にウッドノートを設立。建物・環境・エネルギー・ファイナンスの専門医として、建物・施設の健康管理および価値向上のサポートを行っている。


 地球温暖化問題がメディアで報道されてきたことで、クールビズやエコバッグが広まるなど人々の環境意識は高まっている。しかし、企業活動や日常生活の場である建物や街に、環境配慮型の仕組みを取り入れているところはまだ少ないのが現状だ。世の中のほとんどの建物は、“環境に配慮せず”建てられ、使われているのである。

 建物や街が環境に配慮するには、大きく2つの方法がある。1つは、設計段階から環境に配慮して建築すること。もう1つは、すでにできあがった建物を環境配慮型につくりかえるという方法だ。本連載「ECO建築探訪」では、そんなまだ珍しい環境配慮型の施設を紹介していく。

経営再建中のハウステンボス

 「ハウステンボス」の名前を聞いたことがある人は多いだろう。1992年に長崎県佐世保市で開業した滞在型のエコリゾートで、チューリップと風車の写真を見るとほとんどの人が思い出すのではないだろうか。

ハウステンボス

 ハウステンボスがある場所は、もともと長崎県が工業団地向けに埋め立てた土地。しかし、企業誘致に失敗したことから、長崎オランダ村株式会社(当時)が長崎県から買い上げて、荒れ果てた土地に自然を蘇らせることを目的としてハウステンボスを開発した。

 土地を耕して肥料を与える有機的な方法で土壌を改良し、40万本の樹木と30万本の花を植えた。施設内の建物は、オランダのベアトリクス女王が住んでいる「Paleis Huis ten Bosch(ハウステンボス宮殿)」を模している。「ハウステンボス」はオランダ語で「森の家」という意味で、「自然との共存」をメインテーマとして掲げているリゾート施設だ。

 しかし、1990年代後半には400万人を超える客を集めたものの、リピート客の確保に苦慮し、2003年に経営破たん。現在、会社更生法の適用下で経営を再建しており、「サステナブルデベロップメント(持続可能な開発)」と「エコロジー(環境配慮)」を同時に実現しなければならないという難題を抱えている。

 とはいえ、2007年度は入場者数が年間219万人と2年連続で増加しており、特に韓国・中国・台湾など近隣諸国からの観光客が目立っているという。アジア圏でも自然との共生をうたった「ハウステンボス」の認知度が高まっていることは興味深い現象だ。

 さて、このハウステンボスでどのような環境配慮の試みがなされているのか。技術面、経営面の2つに分けて見てみよう。

40万本の樹木と30万本の花が植えてある
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