花と水の楽園の再建を目指して――ハウステンボス(前編) 新連載・ECO建築探訪(2/2 ページ)

» 2008年09月12日 08時00分 公開
[水谷義和,Business Media 誠]
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技術から見てェコ!:水・エネルギー・廃棄物の循環利用

 ハウステンボスの開発面積は152ヘクタール(46万1000坪)と広大で、東京ディズニーリゾート(ディズニーランド+ディズニーシー)とほぼ同規模だ。敷地内にはホテルやアトラクションなどが点在し、自然素材を敷き詰めた道路で連結している。大村湾から海水を引き込んだ運河も通っており、敷地内を散策していると、あたかも自然の中に街があるかのような体験ができる。

 一方で、ハウステンボスは莫大なエネルギーや水を消費している。「自然との共存」を実現するために、「水・エネルギー・廃棄物の循環利用」が街の基盤を支えている。排水は施設内で浄化処理を行い、トイレの洗浄水や花壇への散水などに再利用。自家発電の排熱を冷暖房に利用したり、生ゴミを堆肥にして活用したりと、ハード面から循環型を意識した街作りが行われているのだ。

 またソフト面においても、施設全体の消費エネルギーの最適化を図るため、学識者も交えた産学連携の「省エネルギー委員会」を立ち上げて研究を重ねている。この具体的な内容や課題については次回紹介したい。

経営から見てェコ!:次世代の環境技術をアピール

 テーマパークでは、客数を増加させることは経営的に重要なミッションだ。ハウステンボスでは魅力あるアトラクションを増やすために、愛知万博の人気パビリオンだった「三菱未来館@earth」を誘致するなどしている。それとともに、「ボタニカル・リゾート(植物とともにある暮らしの創造)」とうたい、自然と共生というメインテーマの訴求力強化にも取り組み、集客力の向上を図っている。

 そして環境と経営の両立が問われる試み、「長崎次世代エネルギーパーク計画」がハウステンボス内でスタートした。

 経済産業省は2007年、太陽光や風力などの新エネルギー設備を来場者が体験できる「次世代エネルギーパーク」の整備計画を自治体から公募。全国で6つの整備計画を採用したが、ハウステンボスもその1つに入った。「新エネルギーと環境産業の振興」を目指す長崎県の意向と、日本の環境先端技術を国内外にアピールできるハウステンボスの施設としての魅力が評価されたようだ。

選出された6つの『次世代エネルギーパーク』計画(出典:資源エネルギー庁資料)

 長崎次世代エネルギーパークでは発電規模が1メガワット級※の太陽光発電設備を備えるほか、電気自動車やソーラーシップ、ソーラーボートなども体験できるように計画している。エネルギーの生産・供給・消費といった「エネルギーの地産地消システム」をハウステンボス内で実施し、新エネルギーの必要性と環境配慮の重要性を来場者に訴える取り組みとなっている。

※一般家庭250世帯相当分の電力をまかなえる

長崎次世代エネルギーパーク計画(出典:資源エネルギー庁資料)

これからのテーマパークに大切なことは

 環境配慮型のシステムが経営にも良い影響を与えることを示すためには、長崎次世代エネルギーパークで導入する新システムを、目新しいアトラクションであることだけにとどめないことが重要。どれだけ環境に配慮していて、どれだけ経済メリットがあるシステムなのか、検証して分かりやすく公開する必要がある。

 「新エネルギーと環境産業の振興」は大切なテーマだが、施設を長期的に運営していく上で重要になってくるのは「最小限のエネルギーで必要十分な施設機能を稼働させること」。新しい技術が導入されたとしても、施設全体のエネルギー消費に無駄があるなら、その効果は半減してしまう。その点、新技術導入と効率的なエネルギー消費を両立させようとするハウステンボスの取り組みは評価されるだろう。

 今後、広くテーマパーク全般において、環境面から経営効率をチェックする指標として、収益を生む「入場者データ」と経費となる「光熱水消費データ」とのクロス分析などを行うことが重要視されるはずだ。テーマパーク経営者は、その初めの一歩として専門家による評価サービスを活用することが求められるだろう。

 さて、次回はハウステンボスで行った光熱費削減についての具体的な試みについて紹介していきたい。

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