120%のデカ目革命――。バンダイナムコゲームスが先月末に投入したアーケード用シールプリント機は、被写体の目だけを大きくする技術を独自に開発し、「目が大きくかわいく写る」ということをセールスポイントとした。男性、特に筆者のような年代から考えれば、「ええ〜っ?」と思ってしまいがちなのだが、実はこれ、いわゆる「ソリューション」というものの本質を表わしているんじゃないかと思う。
バンダイナムコゲームスの「 Jewella Eye(ジュエラ・アイ)」。
「プリクラ」もしくは「プリント倶楽部」はアトラスの商標で、他社製品は単純に「シールプリント機」と表記すべきなのだが、一般名詞化していることもあり、標題にのみその表記を用いた。
さて、そのシールプリント機の元祖、アトラスの「プリクラ」は1995年に初登場している。それ以前にもあった証明写真用の自動撮影機が原点と言われているが、その意味ではシールプリント機も「写真」であることは間違いない。
「写真」とは読んで字の如く「ありのままを写し取ること。また、その写しとった像(広辞苑)」である。しかし、その意味からすると、もはやシールプリント機は「写真」とはますます別物となってきている。
これまでにも絶妙な照明のあて方で、「肌がきれいに見える」仕上がりを実現する、という機種もあり、出来上がったシールプリントを見せられると、「これ、本当に君なの?」と思わず言ってしまいそうになるものもあった。それがさらに進化したのだ。
肌がきれいになって、美人ぽく写る……程度であれば、まだそれは本人であることは間違いない。しかし、目という顔の特定パーツを大きくすると、それはもはや「本人」でないのでは……と思う。
しかし、利用者にとっては、(故・赤塚不二夫的表現をするなら)「それでいいのだ!」という所だろう。
マーケティングのキモは「ニーズの発見」である。ニーズとは「理想の状態」と「現状」の間にあるギャップを意味する。
日刊アメーバニュースの記事で、「Jewella Eye」の開発過程が少しだけ記されていた(関連リンク)。
独自のマーケットリサーチにおいて、シールプリント機を利用するユーザーから「メイクの中でもアイメイクが1番重要」「撮影前にアイメイクを直す」といった声が多く寄せられていることから、“目”にスポットを当てた、という。
昨今の女性のメイクは、アイメイクに最も力が注がれている。マスカラやアイラインで目の周りは真っ黒だ。「何もしなくとも結構目が大きいのでは?」という女性も、丹念に目元を飾っている。多くの女性にとっては、自分の「理想とする状態」からすると「現状」の目の大きさはギャップがあるのだろう。
同記事によれば、大きすぎず、1番かわいいと実感できるサイズに設定。実際の大きさと比べて目が大きくなる効果を施し、自然に、よりかわいく写ったことを実感できる、という。利用者にとって、「写真」として「ありのままを写し取ること」に意味はない。「現実より目が大きく映りたい」というニーズを汲み取って、「よりかわいく写ったことを実感できる」ことが重要なのだ。
「顔のパーツをいじったら本人の顔ではない」とか、「写真とはありのままを写し取ることである」とか、固定概念に縛られず、素直にユーザーニーズを掘り下げ、実現したのがこの「デカ目シールプリント機」だ。
昨今「ソリューション」という言葉もビジネスの世界では用いられる。その実現手段がITであったり、コンサルティングであったりするが、「(企業活動における)問題解決」や「問題解決の方法」ということを表わす。顧客に対する営業活動も、「単なる売り込みではなく、顧客企業の課題解決につながるソリューションセールスが重要」などと言われる。ソリューションにはニーズの深掘りが欠かせない。その意味からすると、ちょっと考えるとあり得なく思えてしまう、「デカ目シールプリント機」から学ぶものは大きいだろう。
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