インタビュー
» 2008年08月11日 15時45分 UPDATE

環境問題を学ぶ“切り札”はカードゲーム (2/2)

[堀内彰宏,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

カードゲームはシンプルでなくてはいけない

ah_oka2.jpg マイアースのパッケージを開ける岡崎氏

――製品化はすぐに決定したのですか?

岡崎 自分たちが目の前でカードゲームをやるようなプレゼンだと、特に年配の幹部の方から「本当に面白いのか」という反応をいただくこともありました。しかし、アースデイなどで子どもたちが楽しんで遊んでいる様子を映像で見せると、反応は一変しました。自分たちには分からないけど、面白いものなんじゃないかと理解してもらえたようです。ちょうど、「甲虫王者ムシキング」「オシャレ魔女 ラブandベリー」のようなカードゲームが流行り出したことも追い風になりました。また、「小学生3〜6年生男子の97%以上がトレーディングカードゲームで遊んだことがあり、80%以上が今も遊んでいる」というバンダイキャラクター研究所の調査結果(2000年)が示せたことも大きかったです。

 小学校で遊んでもらったときには、特に女の子の反応が良かったのが印象に残っています。生物の美しい写真を使用しているので、普通のカードゲームにあるようなモンスターよりは馴染みやすかったからでしょう。保護者からも、「ほかのゲームよりこれをやってほしい。こっちなら買ってあげるよ」という声がありました。

 ただ、製品化が決まっても、しっかりとしたルールはまだ定まっていませんでした。2ステージ制にして、第1ステージで生み出された環境負荷が、第2ステージに影響を与えるといったシステムも考えました。しかし、複雑なことは良くないと思いました。覚えることが多いのは、美しいことではありません。シムシティのように多くの計算が必要なゲームはコンピュータでこそできることで、アナログなカードゲームはシンプルでないといけません。4年生(2007年)の夏に現在のシンプルなルールにすることに決めて、製品化の作業に移りました。

カードを作ることが学びになる

――どんなカードを採用するかという基準が難しいと思います。

岡崎 IPCC※の報告書などを参考にして、カードを作りました。製作の際には慶應の教授陣にも監修していただき、精査に精査を重ねています。しかしそれでも、カードに採用する事柄が必ずしも正しいものであり続けるとは限りません。以前、「IPCCの報告書は政府の都合のいいように書かされているだけ」という指摘もされました。これまでは正しいとされていたことでも最新の研究で評価が変わってしまうものもあるでしょう。

 しかし、私がもっとも重要だと思うことは、情報を分け隔てなく渡して、何が正しいか、何が正しくないかを自分で判断してほしいということです。情報を出すことで議論の場となってほしい、考えるための土台となってほしいと願っています。

※IPCC……「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)」。1988 年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された組織で温暖化問題についての調査をおこなう。

 カードの内容にはNPO活動や企業のCSR活動なども採用しています。どういう活動を採用するか、どのようにカードの効果を設定するかについてのガイドラインを今作成しています。お金を積んだら強いカードになるというのは最悪ですから。その評価にも大学の先生のお力を借りることにしています。

ah_csr.jpg NPO活動や企業のCSR活動を表したカード

 また、プレイヤーが新しいカードを作れるように、白紙のカードをWebサイトでダウンロードできるようにしています。学校の授業で、自分が作ったカードを1枚入れて試合をすることがあります。すると、作ったカードが強すぎたり、変な効果だったりすると、相手から「この効果は合っているのか、書き直せ」と突っ込まれるのです。強いカードを作ろうと思うと、図書館で調べたりして、「CO2を排出削減できるのがこれぐらいだから、カードはこのぐらいの強さになる」と言えなければならない。今までは環境問題を授業で扱うといっても、作文を書くだけ、絵を描くだけでした。でも、カードを作るとなると、良いカードを作るために自主的に学びが行われるのです。

――販売はどのように行うのですか?

岡崎 書店の丸善やWebサイトを通して販売できることになりました。想定している顧客は、小学校3年生から中学校2年生ぐらいまで。学校だけでなく、家庭でも遊んでほしいと思います。2008年春からWebサイトにフォームを設けているのですが、発売日までに180件ぐらいの問い合わせが来ていました。

――今後の展開は?

岡崎 カードがメディアになるという点がカギだと思っています。同様の発想から、オセアニアバージョンやアマゾンバージョン、動物園や水族館のご当地パッケージなども作れると考えています。

 今は、環境問題でも地球温暖化にしかフォーカスしていませんが、エネルギー問題などでも同様のアイデアが使えると考えています。日本だけで完結するものにはしたくない。卒業後も、このビジネスを続けていきます。

前のページへ 1|2       

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ