投資をする際の2つのアプローチとは?――山崎元 VS. 山口揚平の投資対談(中編)(2/2 ページ)

» 2008年08月06日 07時30分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
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投資をするには2つのアプローチ

山口 山崎さんは株式投資でスキルと勝率の相関関係は低いと分析されていますが、それでは知識または情報と勝率の相関関係はいかがでしょうか?

山崎 現実のマーケットの世界において、情報力と勝率の関係は5%もないと思う。情報に有効性はありますが、その有効性を事前に確認するのが難しい。

 情報を持っていても、そのアドバンテージは刻々と変化します。Aという情報がこの相場には向いていたけれども、少し時間が経つとマイナスになることがあります。そのためほかの投資家よりも有利に立つことが難しく、また自分が有利なのか不利なのか、その判断ですら難しいことがあります。

山口 マーケットでは投資スキルや情報があまり役立たないということであれば、どういった考え方が普遍性を持つのでしょうか?

山崎 それには2つのアプローチがあると思います。1つは投資の対象となる企業について“深く知る”ことです。企業の本来の価値はどのくらいなのか? その企業の価値と株価の間に“差”があり、それがどのように調整されていくのだろうか? 企業価値と株価に大きな開きがあっても、急にその差が縮まることはないかもしれません。しかし企業の価値を知ることは有利で、その株を買うかどうかというアプローチができます。

 もう1つはマーケットに参加している人たちの傾向を知るアプローチです。参加者たちの間違いやすい傾向はないだろうか、と考えます。行動ファイナンスを投資に応用できないだろうか、ということも1つの可能性です。いずれにせよ投資家という人間を見ることが大切になってきます。「企業を分析するか? 人間を分析するか?」と聞かれた場合、私はマーケットに参加している人間の方により興味があります。これは投資手法の違いであって、どちらが正解ということはありません。企業を分析する人も多いし、企業と人間両方を見ている人もいます。

山口 私は山崎さんと違って、人を見るというより企業の価値に注目しています。私の場合、大型M&Aを手掛けていたこともあって、上司からは「会社の本質に着目しろ」と言われてきました。それは会社のメカニズムを知るということで、何が価値の源泉なのかを突きとめることが重要なのです。

 もう1つは企業の変化を分析することで、それは売上とか利益率といったものではなく、より先行となる指標でした。例えば経営者が企業にどこまで影響を与えるのか、内部や外部環境はどうなっているのか、企業カルチャーはどうなのか、などいろいろな角度から企業を分析していきます。そうすることで企業の価値を感覚的に見ることができるようになったのです。

 当時、通勤電車の中で行きに1冊、帰りに1冊、企業の財務諸表を読んでいました。とにかく会社を理解したいという気持ちから始めたものですが、これを続けることによって、それまでただの数字だったものが、やがて企業が“立体的”に見えてくるようになりました。感覚的なものなので説明するのが難しいのですが、より深く知れば知るほど平面の広がりだけではなく、高さや奥行き厚みを感じ取ることができたのです。

 →誰もが認める美人より、磨けば光る子を探せ――山崎元 VS. 山口揚平の投資対談(前編)

 →何のために投資をするのか?――山崎元 VS. 山口揚平の投資対談(後編)

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