投資をする際の2つのアプローチとは?――山崎元 VS. 山口揚平の投資対談(中編)(1/2 ページ)

» 2008年08月06日 07時30分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

プロフィール

山崎元(やまざき・はじめ)

経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員、1958年生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事入社。住友信託銀行など12回の転職を経験。2005年から楽天証券経済研究所客員研究員。ファンドマネジャー、コンサルタントなどの経験を踏まえ資産運用分野が専門。

雑誌やWebサイトで多数連載を執筆し、テレビのコメンテーターとしても活躍。主な著書に『会社は2年で辞めていい』(幻冬舎)、『「投資バカ」につける薬』(講談社)、『お金をふやす本当の常識』(日本経済新聞社)など。

山口揚平(やまぐち・ようへい)

早稲田大学政治経済学部卒。トーマツコンサルティング、アーサーアンダーセン、デロイト トーマツ コンサルティング、アビームM&Aコンサルティング シニア・ヴァイス・プレジデントを経て現職。

主な著書に『株M&A大化け相場に乗り遅れるな!』(日本実業出版社 2005年)、『なぜか日本人が知らなかった新しい株の本』(ランダムハウス講談社 2005年)、『世界を変える会社の作り方』(2008年、PDF)など。Business Media 誠では2007年4月〜12月まで連載「時事日想」を執筆


 前回、投資を始めたきっかけについて聞いたところ、山崎元氏と山口揚平氏には違いがあった。ファンドマネージャーを長く続けてきた山崎氏は「自分は人のお金を運用するプロであって、自分のお金は運用しない」という考えで、自分のお金を使って投資をしたことはほとんどない。一方の山口氏は最初の投資で失敗したが、M&Aの仕事を通じ、株価と企業の価値の“差”に注目。その後の投資スタンスが大きく変わったという。

 投資をする際に注目する点は何だろうか? この質問に対しても、2人の意見は異なる――。

 →誰もが認める美人より、磨けば光る子を探せ――山崎元 VS. 山口揚平の投資対談(前編)

 →投資をする際の2つのアプローチとは?――山崎元 VS. 山口揚平の投資対談(中編:本記事)

 →何のために投資をするのか?――山崎元 VS. 山口揚平の投資対談(後編)

投資のスキルと勝率の相関関係は?

山口揚平氏

山口揚平(以下、山口) 山崎さんの言葉からは、マーケットをとても「愛している」ことが伝わってきます。それを山崎さんの趣味である将棋に例えると、「将棋盤を汚したくない」といった感じでしょうか?

山崎元(以下、山崎) ご指摘の通り、「マーケットを汚したくない」という気持ちは強くあります。マーケットというゲームは奥が深くて、面白くてかわいい。だからキレイに保ちたい、という思いがあります。ただマーケットの世界というのはキャリアを積んだからといって、必ず勝てるというものではありません。そこが良い点でもあり、悪い点でもあります。

 だからもし私に優秀な弟がいて「マーケットの世界で働いてみたい」と相談に来たら、「お前は優秀なのだからもったいない」と言いますね。

山口 将棋は、実力によって差が出やすいゲームです。それでは株式投資はスキルと勝率の相関関係はどれくらいあると思いますか?

山崎 まず情報を持っている人の行動でマーケットは動かされます。しかし集団的に間違うこともあるし、集団的に間違っていることに気付いていないこともあります。もしコンスタントに勝てる方法を誰かが発見したとしても、必ず模倣者が出てきて、その方法を真似るでしょう。そして、それまで勝てていた方法の価値は下がる可能性が高くなります。また勝てる方法の価値が下がっていることをなかなか当事者は気付いていないことも多いのです。

山崎元氏

 例えると、畑からたくさんの作物を収穫してきているわけだから、同じ方法を繰り返しているといつかは畑が荒れてしまう。いつも「その方法でいいのか?」と疑いながら投資を続けなければならない、という点もマーケットの面白いところでしょう。

山口 投資スキルというのは、過去のデータを分析することが多いと思います。しかし過去の勝率が高いということは、将来のリスクにつながる可能性があるということですね。多くの人に研究されやすくなって、リスクは高くなっていくと……。

山崎 過去のデータを集め、勝てる方法を見つけようとする人は多くいます。しかしデータを集められるということは、ほかの人も確認できるということ。「画期的な投資方法を見つけた!」と思っていても、すでに多くの人がその方法を実践していることもあります。それに気付かないで、勝てるときもあるし、負けることもあります。そうした摩訶不思議なところも、マーケットの面白さかもしれません。

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