インタビュー
» 2008年07月04日 22時00分 UPDATE

洞爺湖サミット直前だからこそ読んでほしい本:『地球と一緒に頭も冷やせ!』とは?――訳者・山形浩生氏に聞く (2/2)

[堀内彰宏,Business Media 誠]
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温暖化対策は最優先される問題ではない

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――前作の『環境危機をあおってはいけない』や本書で環境意識の高まりに水を差したことで、ロンボルグ氏は環境学者から批判される機会も多いようです。

山形 けなされてはいますが、現状の分析で明らかに間違っているところが指摘されたことはないと思っています。1点、『環境危機をあおってはいけない』で資源価格が高くなることは考えがたいと主張していたことは、数年経って原油や穀物価格が高騰しているのをみると間違っていたかもしれません。もちろん、現在の資源高が永続的なものかということは見ていかないといけないですが。しかしそれを除けば、彼の結論をひっくり返すような話が持ち上がってきたことはないはずです。

 温暖化対策など環境保護論に水を差す議論をする際に、理性的に話ができる人間として彼は重視されていると思いますね。翻訳するにあたって連絡を取る際でも、メールを出すとすぐに返事がきますし、尋ねると何でもすぐに答えてくれます。非常にレスポンスの早い人で、そういうところからもごまかそうとする感じが一切ないので僕は信用しています。

 本書で紹介していますが、彼は『環境危機をあおってはいけない』を書いた後で、我々にとって何が本当に大事なのか優先順位をつけてみようということで、自分だけではなく各分野の専門家に順位付けをしてもらいました(コペンハーゲンコンセンサス)。すると、温暖化はそんな上位には挙がってこなかった。そういう試みをすることで、彼は一応自分がやったことについて責任をとっているわけです。単にあいつの言ってることはおかしいとか、ゴアはダメだと言うだけではなく、優先順位を付けてみたら温暖化が下位になったから代わりに上位になっていることを重視しようよと提案できているのです。

ah_yusen.jpg コペンハーゲンコンセンサス2004で示された政策の優先順位

――実務ではこうした優先順位は重視されないのですか?

山形 多少は考慮されます。僕の本業のODAの仕事では、何かプロジェクトをやりましょうというとき、有効性を計算して役に立つかどうかを調べています。ただ、いろんな分野にまたがって比較するのはなかなか難しいので、あまりやりませんよね。この発電所作るならこっちに発電所を作りましょうとかならできますけど、「発電所を作るか、マラリア対策をやるか」という比較は普通しません。何が重要なのかについての漠然とした感覚はみんな持っているのですが、コペンハーゲンコンセンサスのように大きなレベルで横並びで比較したという例はあまりないですね。

――環境ではなく統計が専門だったことが良かったのでしょうか。

山形 それもありますね。やっぱり自分でもそうですが、自分の専門のところはいろいろ知っているから大事だという話についなってしまう。ODAの現場でも、病院関係の人は「医療の金を増やしてくれ」と言うし、学校の人は「金を増やしてくれないと子どもたちの未来が……」と言うものです。

――本書をどんな人に読んでほしいですか?

山形 そう難しい本ではないので、ごく普通の人に読んでほしい。もちろん“ハードコア”なエコの人に読んでもらって、少し頭から湯気が立ってほしいなとは思っていますけど(笑)。でも、何でもエコという風潮に違和感を覚えていて、2050年までにCO2排出半減なんてことができるのかなあと漠然とした疑問を持っているような人にこそ読んでほしいですね。

――最後に、本書の主張について改めて教えていただけますか?

山形 「何のために温暖化を止めたいんですか、止めたら何かいいことがあるんですか」ということをもう少し考えていただければと訴えている本です。いろんな人がやろうとしているエコ重視的な活動、それ自体はもちろん良心に基づくものだろうし、悪くないものも結構あります。しかし、それを経済全体のレベルでやるというのはどうなのか。どれくらい実現性があるのかというのは、この本を読んで、内容を信じるにせよ信じないにせよ少し考えてほしい。それさえ考えていただければ、この本の意味は十分あったと思います。

 そしてもう1つ、日本のような豊かな国にいるとついつい忘れがちになるんですけど、まだまだ世の中には成長して豊かな暮らしをしたい人がたくさんいます。温暖化対策ばかりに目を奪われずに、その人たちのこともちょっとは考えてあげようねということです。

ビョルン・ロンボルグ 著 山形浩生 訳『地球と一緒に頭も冷やせ!』(ソフトバンク クリエイティブ刊)

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 ヒートアップするばかりの温暖化問題。だが、もっと冷静な議論が求められているのではないか? 『環境危機をあおってはいけない』の著者であるビョルン・ロンボルグが、温暖化問題を徹底解説する。訳者・山形浩生の解説も付す。

 →『地球と一緒に頭も冷やせ!』購入はこちらから(Amazon)

著者プロフィール:ビョルン・ロンボルグ

 1965年生まれ。デンマークの統計学者。デンマークのアーハウス大学政治科学部統計学担当準教授だった2001年に刊行した『環境危機をあおってはいけない』(邦訳は文藝春秋刊)によって世界的に大きな注目を集め、環境問題を語るときに避けては通れない人物の1人としてその名を知られる。

公式サイト:http://www.lomborg.com/


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