ご先祖様を探せ! “舶来時計”ラドー「ゴールデンホース」の場合+D Style 時計探訪(1/2 ページ)

» 2008年09月18日 08時00分 公開
[泰 仁,ITmedia]
photophoto 左は現行のラドー「ゴールデンホース」(クロノメーター認定モデル)。右は初代モデル

 今から50年前の1958年といえば、日本は高度成長のど真ん中。先進国の仲間入りをするために日本中が一丸となってモーレツに働いていた時期でもある。その1958年に誕生した、またデビューしたものに“妙に力が宿っている”と感じることがある。

 例えばホンダの「スーパーカブ」。世界生産累計6000万台という、1つのプロダクトとしては驚くべき記録を達成したこのバイクは、初期モデルから現在まで大幅なモデルチェンジもなく、究極の実用バイクとして、世界中の庶民の足として活躍している。そしてクルマでは大衆コンパクトカーの元祖ともいえる「スバル360」。富士重工初の市販4輪車は「てんとう虫」の愛称で親しまれ、わずか360ccのエンジンながら軽量ボディのおかげで4人が快適に乗れる手品のようなクルマだった。また食品分野では、今や全世界を席捲するインスタントラーメンの元祖ともいえる日清食品の「チキンラーメン」が登場。ほかにも近年話題の「東京タワー」、最高金額紙幣の「1万円札」なども1958年デビュー組だ。洗練やオシャレなイメージとは程遠いけれど、“昭和力”的な頼もしさを感じずにはいられない。 ※当時の価格(スバル360/42万5000円、チキンラーメン/35円)

 時計でいえばスイスのラドーの輸入販売が1958年に開始された。そして、日本に最初に発売された時計が、今回取り上げている「ゴールデンホース」である。

 当時はまだ輸入時計という言葉すら一般的でなく、“舶来時計”と呼ばれていた。当時の“舶来品=高級品/贅沢品”のイメージは、1ドル360円の為替レートだったこともあり、現在とは比較にならないほど高かった(余談だが当時「バナナ」は高級フルーツの代名詞で、病気をしたときとかお客さんが来たときくらいしか口にできなかった)。

 国産時計とくらべて、丈夫な設計、洗練されたデザイン、120メートル防水性能、しかも“舶来品”というセールスポイントをそろえた「ゴールデンホース」は、あっという間に高度成長期の日本人男性を虜にしてしまった。

ゴールデンホース初代モデル

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 手首の動きで回転するアンカーマーク(錨)、向き合ったシーホース(タツノオトシゴ)、デイト表示、57石、といったディテールとスペックを備え日本に初めて上陸したラドーの時計



ケースバック

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 裏蓋はケース本体にがっちりと締め込まれるスタイルの「ねじ込み式」を採用。防水性の高さを誇る証として、裏蓋表面にはダイヤルと同じく向き合ったシーホース(タツノオトシゴ)があしらわれ、その下にWater Sealedの表記が見られる。



ブレスレット

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 ブレスレットモデルの中折れ部分には、スプリングが内蔵されているおかげで、若干の伸縮に対応してくれる親切設計。例えば机の角に手をつけて、“よっこらしょ”と立ち上がる際、腕が少し膨張することでブレスのバックルが外れるケースがあるが、それを防いでくれる。



バリエーション紹介

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 初代ゴールデンホースは冒頭のSSモデルをはじめ、ゴールドプレイテッドケース&シルバー文字盤(写真左)や、金色文字盤なども存在した。またバリエーションとして「グリーンホース」(写真右)や「パープルホース」というモデルもあった。ゴールデン、グリーン、パープルの違いは、文字盤上のシーホースの色が、それぞれ金、緑、紫色という程度。なんと大らかな時代(笑)。


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