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QUICPayに本腰を入れる理由は?――トヨタファイナンスの戦略 (前編) (1/3)

MOPPA陣営の中で、ある意味本家JCBよりも積極的にQUICPayの普及に注力するトヨタファイナンス。QUICPayに力を入れる理由や、今後の戦略について聞いていく。
2006年09月12日 17時35分 更新

 おサイフケータイの登場により本格化したFeliCaクレジット決済の競争は、キャリアも巻き込んだモザイク模様の混戦になりつつある。この分野の連携としては、かねてからドコモと三井住友カードが「iD」(2005年11月8日の記事参照)を推進。ドコモイシュアのDCMX mini / DCMX(4月4日の記事参照)が中核になって会員数を急激に伸ばしてきた。一方、ジェーシービーが中心となって推進する「QUICPay」は、KDDIがau秋モデル以降で対応アプリをプリインストール(9月4日の記事参照)。“QUICPay版DCMX mini”ともいえる「お試しQUICPay」も導入される予定だ(9月6日の記事参照)

 キャリアとイシュアが特定のFeliCaクレジット決済を推し、それぞれ陣営を築き始める中で、注目されるのが「会員獲得のスピード」である。iD陣営はドコモ自らが発行するDCMX mini / DCMX(4月5日の記事参照)が会員獲得のエンジンになっているが、QUICPay陣営でKDDI自身がイシュアになって会員獲得をドライブする予定はない。では誰が、QUICPay普及の“エンジン”になるのか。

 9月12日、トヨタファイナンスがQUICPayの本格展開について発表した(9月12日の記事参照)。今日の時事日想は特別編として、トヨタファイナンス執行役員総合企画部長の後藤清文氏と、トヨタファイナンス カード本部カード企画部長の宮本淳志氏にインタビュー。トヨタファイナンスの現状から、QUICPayの戦略までを聞いた。

ay_kamio.jpg トヨタファイナンス執行役員総合企画部長の後藤清文氏(左)、カード本部カード企画部長の宮本淳志氏(右)

クルマから家計に直結するトヨタファイナンス

 トヨタファイナンスのイシュアとしての歴史はそれほど深くない。1988年11月、同社はトヨタ自動車の金融財務部門から分離独立。トヨタグループ金融部門の純粋持ち株会社トヨタファイナンスサービスの完全子会社として、トヨタファイナンスは誕生した。同社の看板商品であるコンシューマー向けのクレジットカードサービス「TS3 CARD (ティーエスキュービック)」が投入されたのは、2001年4月のことだ。

 イシュアとしては新興であるが、その後の成長は注目に値する。会員数は現在560万人。トヨタを中心とするカーライフとの連携により、ETCカードの発行枚数や利用率の高さでは業界随一だ。

 「我々のお客様は、ほぼすべてが『クルマのオーナー』ですので、ETCカードは(TS3の)標準的な装備になっています。現在は200万枚に迫る枚数になっています。さらにクルマを中心にしたライフスタイルを重視していまして、カードポイントの付与率や還元率を、他社よりも高く設定しています」(宮本氏)

 トヨタファイナンスは、トヨタ系列だからという理由で、単純にクルマ重視の姿勢を取っているわけではない。同社がクルマの先に見据えているのは、ユーザーの「生活基盤」である。

 「家計に占めるクルマ関連のコストというのは、かなり大きい。カーライフの基盤になるクレジットカードは、(生活の)メインカードにしていただけるのです。実際、TS3の稼働率や利用単価は業界でもトップクラスです」(宮本氏)

 これは地方在住者ほど実感できると思うが、モータリゼーション以降、生活と経済はクルマ中心にまわっているのが現実だ。クルマにまったく依存せずに生活が可能なのは、東京や大阪など一部の大都市だけである。「クルマは家計と直結する」(宮本氏)のだ。

 「我々のカードは、クルマを軸とした生活と親和性が高い。我々は(TS3を)『家計貢献カード』と位置づけています。そのあたりが『トラベル&エンターテイメント』を重視してきた従来型のクレジットカードと、根本的にコンセプトが異なる部分です」(宮本氏)

 1つ補足すると、トヨタファイナンスの中にもトラベル&エンターテイメントやステータス性を重視したカードがある。レクサスカードだ。こちらはトヨタの高級車ブランド『レクサス』のオーナーのみが発行対象になり、存在するのは“プラチナカードだけ”という完全なステータスカードだ。トヨタファイナンス全体としてはTS3で「クルマを軸とした生活」を重視しつつ、レクサスカードでは従来型の「トラベル&エンターテイメント」や「ステータス」を押さえるラインアップになっている。

 「トヨタファイナンスの場合、発行枚数の約9割がプロパーカード(注:自社で発行しているカード)であるTS3になります。残り1割の提携カードでいちばん多いのが、(石油元売りの)ジャパンエナジー向けの『JOMOカード』ですね。こちらが90万枚ほどあります。TS3とJOMOカードで、発行枚数のほとんどを占めます。新しい動きとしてはスルッとKANSAIのPiTaPa向け提携カードがありますが、こちらは3万枚ほどです」(後藤氏)

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[神尾寿,ITmedia]

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