「あんなこと、言わなければよかった」――不用意発言をなくす3つのポイント表現のプロが教えるスピーチの兵法(2/2 ページ)

» 2014年10月06日 13時12分 公開
[企業実務]
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表現するときに押さえたい3つの重要要素

 表現について戦略を立てるときは、図に示した要素ごとに戦略を立てることをお勧めします。

 言語表現とは、「何を話すか」という話の内容・言葉そのもの、それに対し非言語表現とは、「どのように話すか」です。

 非言語表現は、さらに身体非言語表現(視覚から受け取る情報。いわゆる見た目)と音声非言語表現(聴覚情報。声の高さや大きさ、話す速さなど)の2つに分かれます。

 つまり表現は、(1)言語表現(2)身体非言語表現(3)音声非言語表現の組合せで成り立っています。

Photo 表現は3つの要素から成り立っている

 私たちアナウンサーは、この3つを常に意識しながらアナウンスします。

 まず何がニュースなのか、どういうポイントを視聴者に伝えたいのかを明確にし、そのうえで、どのような言葉・表現を使うのかを考えます。本番では、「どのような服装・表情で映ろうか」「どのような声の高さ・速さでニュース原稿を読もうか」と工夫しているのです。

「馬鹿」という言葉1つにもたくさんの戦略が立てられる

 言語・非言語表現の違いによって、聞き手には意味が違うように伝わります。

 例えば、指導の際に「馬鹿」という言語を使ったとします。

 目を見開いた鬼のような形相で「馬鹿」と大声で叫ぶのと、眉間に皺を寄せて小声で「馬鹿……」とつぶやくのでは意味が違います。笑いながら大声で「ばぁ〜か」と叫ぶと、また意味が変わりますね。これらを意図的に使い分けることがとても重要です。

 あなたの表現はいつも同じパターンになっていませんか? 非言語表現を使い分けているでしょうか? 常に同じ顔・口調で発言していませんか? 言語表現のバリエーションが少なくはないですか?

 以前、私がスピーチコンサルティングを担当した方のなかに、「馬鹿」という言葉が口癖の経営者がいらっしゃいました。叱るときも「この馬鹿」、飲みに行ってご機嫌のときも「お前は馬鹿だなぁ」。なにかにつけ「馬鹿」という言語を使用するのです。

 言語・非言語の使い分けが難しい場合、まずその表現の目的を明確にしましょう。

 部下に対して「馬鹿」という言語を使用するとき、あなたが伝えたい気持ちは「叱責」なのか、それとも「指導」なのか、はたまた「親近感」なのか、それによって選択する非言語が変わります。

 目的がないところに戦略は立てられません。表現も同じです。相手に伝えたい思い、相手にどのような行動を起こしてほしいのかという目的を明確にしましょう。

 これはメールでのコミュニケーションも同様です。馬鹿(漢字)、ばか(ひらがな)、バカ(カタカナ)では受ける印象が違ってきます。記号や絵文字も非言語表現の1つですから、「バカ!」「バ〜カ」「(〉д〈)バカ」でも違いますよね。メールは、対面ではないからこそ文字の非言語の役割は大きくなります。


 「表現を意図的にマネジメントしましょう」と提案すると、変に考え込んでしまい、無口になってしまう方がいます。しかし、難しく考える必要はありません。今回は、「今までの自分がいかに無意識に口を開いていたか」ということを自覚するだけでも十分です。

 目的に応じたベストの言語・非言語を選び取ることを目指して、リスクマネジメントという観点から自分の話し方について一緒に考えていきましょう。

今月のポイント

戦略もなく自分を表現することは大きなリスク。「無意識に口を開いていないか」ということを意識して!


著者プロフィール:矢野香

キャスター歴17年。主にニュース報道番組を担当。大学院では心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究。現在は、政治家・経営者・管理職を中心に「信頼を勝ち取るスキル」を指導。著書に『その話し方では軽すぎます! 〜エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』がある。著者オフィシャルサイト


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