「あんなこと、言わなければよかった」――不用意発言をなくす3つのポイント表現のプロが教えるスピーチの兵法(1/2 ページ)

「あんなことを言わなければよかった」「相手を何であんなに怒らせてしまったのだろう」――こんなコミュニケーションの失敗をしたことはありませんか。元NHKの矢野香さんの連載を通じて、「リスクを避ける話し方」を学んでいきましょう。

» 2014年10月06日 13時12分 公開
[企業実務]

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 本記事は企業実務のコンテンツ「表現のプロが教えるスピーチの兵法」から一部抜粋・編集して掲載しています。


世間から非難を浴びた「逆切れ会見」の原因

 読者の皆さん、はじめまして。矢野香と申します。テレビやラジオでニュース報道番組を担当して17年目になる私が、この連載を通してお伝えしたいこと、それは、「自分の表現について意図的に戦略を立てる重要性」です。

 日々のニュースは、経営者や政治家が記者会見やインタビューの形でスピーチする姿を映します。

 彼らのスピーチは、表現に対するマネジメント感覚がある人とない人の差が歴然としています。

 2011年5月、集団食中毒で死亡者を出した焼肉チェーン店の経営者が、記者会見で感情的に発言をし、「逆切れ会見」と評されたことを覚えているでしょうか。

 その原因は、記者から矢継ぎばやに投げかけられる質問に対し、経営者が戦略なしに口を開いてしまったからだと私は思います。謝罪の思いが伝わらないばかりか逆に不信感を与え、事態をより深刻にしてしまったケースでした。

 ここまで極端ではなくても、皆さんも普段の会話で同じような失敗をしていないでしょうか?

 表現に対するマネジメント感覚が必要なのは経営者だけではありません。管理職はもちろん、総務・経理などの管理部門を担当する立場であれば、いきあたりばったりの発言、つまり「不用意な発言」をしてはならないのです。

 「不用意な発言」とは、例えば、個人的な意見をさも会社全体の意見のように取引先に伝えたり、上層部の意見を自分の解釈によって歪めた形で従業員に伝えてしまったりすることなどが考えられます。前者の例は会社の損害に直結する危険性がありますし、後者の例は従業員からの信頼性を損ねるリスクがあります。

 「不用意な発言」の原因は、まさに「不用意である」ことです。

 焼肉チェーン店の経営者も、わざと誤解を招く発言をしたわけではありません。戦略もなく無意識に口を開いたため、結果として起こってしまった事故なのです。

 経営者や管理部門の担当者の言葉は、たとえ「ちょっとした一言」であっても、トラブルが起きてしまえば「ちょっとした一言」では済みません。戦略に沿って表現することは、リスクマネジメントにほかならないのです。

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