親身になって話を聞いているのに、部下の心が離れていくのはなぜ?そのひとことを言う前に(3/3 ページ)

» 2014年08月28日 09時00分 公開
[岩淺こまき,Business Media 誠]
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「結論を急がないこと」も重要

 もう1つは、感情に合わせた対応をする段階でミスをしてしまう可能性です。

 相手が明らかに感情を込めて話している場合、その喜怒哀楽に反応する手順を踏まずに、事実関係についてのみ反応をすると、先に挙げたNGケースのようになります。確かに、要求水準が高くて終電になるのも、上司がチェックするのは仕事であることも事実なのですが、そればかりを突き詰めると会話は盛り上がりません。

 ありがちなのが、結論を急ぎすぎて「そんなのこうすればいいじゃないか」「何が言いたいの?」と言ってしまうパターン。そもそも、感情が高ぶっている人は結論や解決法が聞きたいわけではなく、喜怒哀楽に反応を示してほしいだけなのです。それにきちんと応えてあげれば、相手は落ち着くはずです。

 何かアドバイスをしなければ、何か役に立つことを言わなければ、という意識は忘れましょう。いつもの反応をする前に感情への反応を少しはさんでみる。先に落ち着かせてから事実関係を確認したほうが相手の理解も得られ、問題が短時間で片付くことも多いのです。

 こうした意識を踏まえ、先ほどのNGケース2の会話を少し変えてみましょう。

OKケース2:感情に対応した受け答え

女性: で、上司がすごくめんどくさいのよ。全部把握しなきゃ嫌なタイプみたいで。タスクの1つ1つも、全部納期チェックしてきてさー。言われなくても仕事くらいするって。

男性: 全部把握したいタイプの上司なんだね。なるほどねー。(感情が特定できないので、オウム返しで反応して会話を促進)

女性: そうなのよ、そこまで? って思う事までいちいちチェックするの。そんなにチェックに時間使うなら、違う仕事してって思うよ。

男性: かなり細かそうだね。神経使いそうで、大変だね。(イライラに反応)

女性: 本当、そうなのよー、この間もさ……(続く)。


女性: グチっぽくなっちゃって、ごめんね。上司のおかげで助かったこともあるし、あんまり言ったらだめだよねー。

男性: ま、確かに面倒だしね。言いたくなるときもあるよ。

 このように、相手が明らかに感情を込めて伝えてきているのであれば、まずはその思いに寄り添ってみてください。会話は進み、話のトーンも持続するでしょう。相手の感情が分からないときがあっても、それを恐れず、落ち着いて対処すれば“相手の期待に応える”コミュニケーションに大きく近づくでしょう。

今回のまとめ

Q:会話をしていて、相手のトーンが下がってしまうことがあります。間違ったことは言ってないんですが。

A:正しければいいというものでもありません。相手の感情にも目を向けて、相手の期待に応えるコミュニケーションを心がけてみましょう。会話がスムーズに進み、トーンも下がらなくなるはずです。


著者プロフィール:岩淺こまき

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 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師

 大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。


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