自分に期待しなければ、企画はでてくる困っている人のための企画術(2/3 ページ)

» 2014年08月26日 11時00分 公開
[福里真一,Business Media 誠]

「自分には才能がない」と決めたら、うまくいきはじめた

 そんなふうに、「才能がない」と決めてから自分の中で変わったことは、企画がどんどんでてくるようになった、ということです。

 自分に、すごい企画、誰も考えついたことのないような天才的な企画を考えつく可能性があるなら、悩みに悩んでもなかなか企画がでてこない、ということもありうるわけですが、そもそも才能がないんだから、どんなに考えてもたいした企画がでてくるわけがない。

 そう思ったらすっかり気楽になって、企画がスムーズにでてくるようになった。「どうせ自分だし、しょせんはこの程度なんじゃないの」という感覚で、どんどん思いついてしまえるようになったわけです。

 そうしてどんどん思いついた企画が、全然だめな企画だったかというと、もちろん世の中を震撼(しんかん)させるような、すごい企画ではないわけですが、それなりには評価されたりもしました。

 ちょうどその頃に企画したのが、吉本興業のタレント総出演によるジョージアの「明日があるさ」というCMと、岸本加世子さんと田中麗奈さんが店員のお店に樹木希林さんが客としてやって来る、富士フイルムの「フジカラーのお店」というCMでした。自分としては「まあ、この程度だな」という感覚の企画だったにもかかわらず、あれよあれよという間に広告主に選ばれ、世の中にオンエアすると、それなりに評判にもなりました。

 わざと謙虚に言っているのではなくて、本当にどちらも、才能のきらめきのようなものを感じさせるような部分はまったくない企画だと思うんです。

 ダウンタウンをはじめ、吉本興業のタレントのみなさんが『明日があるさ』の替え歌をバックに現代のサラリーマン模様を淡々と演じたり、岸本加世子さんと田中麗奈さんと樹木希林さんの3人が、フジカラーのお店で商品についての会話を軽妙に交わすというものですから、正直、誰にでも思いつきそうな企画です。

 それ以前に自分なりに考え抜いて、「これはすごく斬新なんじゃないか」と思って提案した企画よりも、自分から見てもベタっぽい企画のほうが、なぜか評価が高かったわけです。

 もちろん、本当に才能がある人は、そうじゃないほうがいいと思うんですよね。ひとつひとつの仕事で、必ず、誰も思いついたことのないような、斬新で、その人にしか思いつけない企画を思いついていく。基本的に、まずはそれを目指すということでいいと思いますが、全員がそうなれるわけではないのです。そうでなければ、「自分には才能がない」という前提で、もう気楽にどんどん企画を考えてしまう。

 私の場合、そうしはじめてから、少なくともその前よりは、仕事がうまくいくようになったのは確かなのです。

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