未来をイメージできないのは、Aさんの想像力がないわけではありません。イメージを引き出す方法を知らなかっただけなのです。得意な五感情報から入ると、他の情報を引き出せる可能性があります。次の問いで、どの五感がもっとも得意なのかを知るきっかけにしてください。
視覚的な問い:
これまで最も思い出に残っている旅行のワンシーンを思い出してください。それは、どんなシーンですか?
聴覚的な問い:
これまで最も思い出に残っている旅行で、記憶に残っている音や言葉を思い出してください。それはどんな音や言葉ですか?
身体感覚的な問い:
これまで最も思い出に残っている旅行の楽しかった感覚を思い出してください。それは体のどのあたりで感じていますか?
視覚、聴覚、身体感覚の中で、あなたがもっとも取り組みやすいと思ったところはどこでしょうか?
「これまで最も思い出に残っている旅行」は過去の話ですが、未来も同様です。1年後のイメージも、あなたが最もやりやすい五感から想像を始めればいいのです。そしてあらゆる感覚の情報を具体的にしたのち、それを実現したらどうなっているのか。「楽しさ」「ワクワク感」「幸福感」「充実感」「達成感」などを身体感覚で十分に味わってください。
かなえたい状況が具体的になったら「それによって、何が得られるのか(目的)」を繰り返し考えてみます。
例えば「○○の資格を取る」が1年後にかなっているイメージだったとします。すでにお話した方法で「資格を取ることで新しい機会が生まれている」「顧客から、『○○さんの仕事はすばらしいですね』と評価されている」「そのとき胸のあたりに大きな充実感を感じている」など、視覚、聴覚、身体感覚などの情報でそれがかなっている状況が具体的にできることでしょう。
しかし資格は、何かの目的を達成する手段です。それによって何を得られるのか……つまり「資格を取ることで、○○になれるんだ!」という資格を取る目的や意味がハッキリすることで、さらなる動機づけにつながる可能性があります。
けれども「目的は何か?」と直接的に考えても「目的」という言葉自体がイメージしにくいので、なかなか考えづらくありませんか?
私たちが行動を起こす根源を考えてみると、「何かを得たい」もしくは「何かを失いたくない」のいずれかです。そこで「○○によって何が得られるのか」「そもそもその資格を取る意味は何か?」などの問いを繰り返し考えてみます。
「○○の資格を取る」ならば「○○の資格を取ることによって、何が得られるのだろう?」と考えてみます。「顧客から信頼が得られる」などの答えになるでしょう。一度で終わらせず、「顧客からの信頼を得ることによって、何が得られるのだろう?」と繰り返し考えてみます。
「○○の資格を取る」→「顧客から信頼が得られる」→「顧客から評価される」→「自分に自信がつく」→「仕事のやりがいが得られる」→「毎日の仕事が楽しくなる」など、「その上の目的」が明確になれば「なるほど! そのために資格が必要なんだな」という動機づけにつながっていくでしょう。なぜなら「1つ上の目的」の最上位にあるものは、あなたが日常、あまり気づくことがない、大切にしている信念や価値観である可能性が高いからです。
細かい行動は覚えられなくても「○○をかなえる1年にする」という大きなビジョンなら覚えることは1つです。そのビジョンがしっくりくるかどうか常々確認していくことで、軸がぶれずに臨機応変な行動ができるようになるでしょう。
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