先川さんのように説教ばかりする人は、感情的に話すため間違ったことを言ってくることが少なくありません。しかしそうした発言にそのまま反論しても、聞く耳を持たれることはなく、むしろ逆上されてしまいます。
そんな時は、前置きをして先川さんの耳をこちらに向かせましょう。「言いわけになるかもしれませんが」「誤解を恐れず言わせてもらいますが」と前置きし、感情的な先川さんを落ち着かせながら「今から反論しますよ」というメッセージをあえて送るのです。前置きをさえぎらなかった段階で、とりあえずは言いわけを許可した形になるため、先川さんは知らず知らず話を受け入れる姿勢になり、聞く耳を持ってくれます。
上司であろうと、相手が間違っていると思ったときはしっかりと意見を言うことで、ナメられなくなることはもちろん、周囲はあなたを芯のある人、物怖じしない度胸を持った人、と評価するでしょう。
例
先川 お前はほんっっっとに何にも知らねえな!
南 すみません……。けど言いわけになるかもしれないんですけど。
先川 何だ?
南 毎日一番に出勤して一番遅くまで残業してますから、サッカーを気にする時間なんてないです。
先川 それはお前の時間の作り方が悪いんだろ!
南 仕事のことはさておき、何で僕の時間の使い方まで言われなきゃならないんですか?
先川 何!?
南 それに。さっき「何も知らない」って言いましたよね? そうですよ。1年目で何も知らないから仕事に時間取られて自分の時間が作れないんですよ。
ここでは「言いわけになるかもしれませんが」と前置きをし、それから反論を展開しています。先川さんの説教の矛盾点を取り上げて、論理的に切り返しているのがポイントです。感情的な先川さんに流されず、冷静に受け答えしている点も見習いたいところです。矛盾したことを言ってきた瞬間を逃さず、確実に反論しましょう。
実用例(先川上司に営業用の資料を提出した際に)
先川 お前は言われたことも直せないのか!?
資料は落ち着いた色でまとめろ!
あなた すみません! ……しかしお言葉ですが。
先川 言いわけをするな!
あなた これだけは言わせてください! 一点だけです!
先川 一点だろうが十点だろうが言う必要はない!
あなた 分かりました。先川さんの耳にも入れておいた方がいいと思ったんですが……。
……分かりました。言っとくべきだと思いましたが……。分かりました。
先川 な、何だ! 試しに言ってみろ!
あなた 以前先川さんが欠席された会議で、資料は配色を明るくしろと、部長が。
例のように前置きを拒否され、言いわけが受け付けられない時は「言うべきだと思ったんですが。分かりました」と引いてみるのも手です。内容が気になった先川さんは「試しに言ってみろ」と食いついてくることでしょう。
お門違いな説教の場合、こちらがあまりにも正しいため先川さんに逃げ道がなく、そのまま反論するとかえって険悪なムードになってしまいます。しかし前置きすることによって言いわけを許可してあげたという事実が生まれ、先川さんの気まずさは軽減され、あなたの反論を受け入れやすくなるのです。
のように、思わず先川さんが興味を持ってしまうような前置きが有効です。
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