あなたの知らない「フリーランス」の世界Re:Work !(3/3 ページ)

» 2012年09月18日 10時00分 公開
[三河賢文,Business Media 誠]
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まだある、フリーランスの苦悩

 フリーランスというものは、どうしても社会的信用が低い。そのため、大企業などを相手にするのであれば、法人化した方が良いという考え方もある。実際に私も、これまで数回ではあるが「個人との契約ができない」という問題に直面した経験を持っている。

 また仕事以外でも、実は悩ましいことがいくつも起こる。特にこれから家庭を持ったり、家を買ったりしようと考えているのなら、ぜひ良く考えておいてもらいたい。

 まずフリーランスで働いていると、住宅ローンなどがなかなか組めない。ローンには審査があり、会社員であれば就業先の財務状況や勤務年数などを基準に、「貸せる金額」が決定される。しかしフリーランスの場合には、あなた自身が審査対象となるのだ。

 フリーランスになって1〜3年は、相手にもしてもらえないと思っておいた方が良いだろう。数年経ったとしても、大きく収入(フリーランスの場合、確定申告の内容が基準)を得ていなければいけない。「貸せる金額=収入×何%」という計算基準があり、また「貸す」対象になるのにも収入のラインが決まっている。これは実際に不動産屋や金融機関にも聞いた話なので、間違いない。

 また今独身で結婚を考えているのなら、「フリーランスである」ということが障害になる可能性はゼロではない。不況とはいえ会社員に対する金銭面での安心感はまだまだ消えていないし、むしろ不安定なフリーランスという働き方を、しっかり理解してくれる人は決して多くはない。

 悲しい話だが、私の知り合いには独立したことによって、付き合っていた相手と別れることになったという人もいる。しかし将来を真剣に考えるからこそ、そういう結論になってしまうのだと理解できないことではない。

 ちなみに私が独立したのは、結婚して既に長男が産まれてからのことだ。さらにその年には、次男も産まれている。多少反対こそされたが、幸いにも私は理解を得られたのでこうして働けている。しかしそれでも、最初は「まず1年」という約束でスタートした。ワークスタイルが変わるということは、やはり生活そのものにも大きな影響を与えるものなのだろう。

もちろんメリットもたくさんある

 フリーランスで働くことのメリットは、人によって異なる。私の場合であれば、一番の恩恵はやはり「時間」といえるだろう。いつ休もうが、いつ仕事をしようが、時間の使い方は自分で決められる。

 例えばショッピングセンターや映画、観光地だって、平日に行けばガラガラだ。フリーで仕事をするようになってからというもの、そういった場所へ土日祝日に足を運んだことはほとんどない。私は人混みが大嫌いなので、これは大いに助かっている。

 また自宅で仕事をしているので、家族との時間は格段に増えた。アポイントで外出していない限り、常に家族と一緒にいるということになる。先日なんてあまりに良い天気で暑かったので、昼に仕事を切り上げて長男を保育園まで迎えに行き、近くの区営プールへ直行した。

 食事はほとんど家族と3食一緒にできるし、仕事をしていても何かあればすぐに話すことができる。たまに仕事場へ子どもがそっと入ってきて、静かに本を読んでいる光景も見られる。

 少し違う軸でメリットを考えるのであれば、「刺激」が挙げられるかもしれない。

これはデメリットと非常に表裏一体ではあるが、常にリスクを含んだ選択を自分で行っているので、スリリングである。また仕事の「これから」を自ら作り出していけることは、なかなか他では味わえない。さらに付き合う人も、自然と同じフリーランスや経営者なんかが増えてくる。そうすると、遭って話をするだけで得られる刺激が大きい。

 このように、フリーランスあるいはノマドワークという働き方については、第三者として見ているだけでは分からない様々な実態がある。その実態を把握し、メリットとデメリットを良く照らし合わせた上で、働き方を考えて頂ければと思う。

 では反対に、会社員という働き方はどうなのか。これは読者の皆さん自身も色々と思うところがあると思うが、次回は会社員からフリーランスへと転身した視点で、会社員という働き方がどう見えるのかをお伝えしたい。

著者紹介:三河賢文(みかわ・まさふみ)

 1983年岩手県生まれ、宮城県育ち。人材コンサルティング会社、Web関連会社での勤務を経て、2010年6月にナレッジ・リンクスとして独立。「時間の自由」を第一としたワークスタイルを実践中。多くのSOHOやフリーランスワーカーとパートナー関係を持ち、業務機会の提供を行っている。プライベートでは2人の子どもを持ち、マラソンやトライアスロンにも挑戦。ITやビジネス全般を中心とした執筆活動も行う。



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