原発再稼働の判断、権限は国か地方か――マイケル・サンデル教授の「民主主義の逆襲」5000人が白熱した特別講義(1/6 ページ)

米ハーバード大学教授のマイケル・サンデル氏の特別講義「ここから、はじまる。民主主義の逆襲」。第2部では震災がれきや原発など、現在日本が抱える問題について議論した。

» 2012年06月21日 17時30分 公開
[上口翔子,Business Media 誠]

 ベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』筆者で米ハーバード大学教授のマイケル・サンデル氏が、5月28日に東京国際フォーラムで約5000人を前に「ここから、はじまる。民主主義の逆襲」と題した特別講義を行った。

 講義は前編、後編の2部構成。ハーバード大学で延べ1万4000人超が履修したサンデル氏の講義「Justice(正義)」のように、ボードやスライドは一切使用しない、受講者に語りかける対話形式のスタイルを取った。

 前編の内容は5月16日に発売した近著『それをお金で買いますか――市場主義の限界』でも触れているダフ屋行為や命名権、インセンティブについて。「レディー・ガガのチケットや病院の予約券を転売するダフ屋行為は許せますか?」や「放射性廃棄物の受け入れはお金で解決できますか?」といった質問を会場に投げかけ、受講者はYES/NOの意思表示とその理由を述べながら議論を展開した。

 後編は、震災がれきや原発再稼働をテーマとした「東日本大震災後の日本について」。約2倍の応募から選ばれた5000人は原発再開や電力料金の値上げ、東日本のガレキ問題についてどう答えたのだろうか?

サンデル氏は会場に向けていくつかの難題を提示
受講者はサンデル氏の問いかけに対し賛成であれば白、反対であれば赤、というように手持ちのパンフレットを掲げて自分の意思を示した

震災がれきはみんなで協力して処理すべき?

サンデル 東日本大震災が起こったことで日本はどう変わったのか、また民主主義の未来はどうなるのか、日本の未来はどうなるのか。ここからはそうしたテーマについて議論したいと思います。まずは皆さんの意見を伺います。

 サンデル氏はここで、震災後に募金をした人、ボランティアとして復興活動に参加した人にパンフレットを掲げるよう促した。

サンデル (大勢がパンフレットを挙げているのを見て)もう本当に頭が下がります。世界は震災後、日本に注目をしました。そして日本の皆さんに同情、共感をしただけでなく、尊敬をしました。日本全体が一体となって結束し、危機に対応したことを高く評価したのです。

 さて、震災から1年以上が経ちました。われわれにとって、皆さんと一緒に議論するよい機会だと思います。復興のこの時期だからこそ、東日本大震災によって日本はどう変わったのか、いくつかの難しい問題について議論できるかどうか試みてみましょう。内容はまさにいま日本でも議論していることばかりだと思います。では最初の質問です。

東北地方には津波によって生じた大量のがれきが残っています。その一部は放射性物質で汚染されたものです。大半はそうではありませんが、それでもまだまだ大量のがれきをこれから処理しなければなりません。それについて、国が助成金を出して国全体でがれきを処理すべきだと思いますか? それとも国が全てを負担して東北地方だけで処理すべきですか?

サンデル 意見はかなり分かれているようですね。大多数の人は国全体で処理すべきだと思っているようです。ところが、がれきを国全体に分散してはいけない、東北地方だけで処理すべきという意見の人もかなりいるようです。

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