キャリアは航海である――新社会人に贈る言葉(1/4 ページ)

航海に大事なものは「船・羅針盤・目的地入り地図」。船=自立、羅針盤=自律、目的地入り地図=自導。果たして、あなたはこの3要素が揃っているだろうか?

» 2012年03月27日 08時00分 公開
[村山昇,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:村山昇(むらやま・のぼる)

キャリア・ポートレート コンサルティング代表。企業・団体の従業員・職員を対象に「プロフェッショナルシップ研修」(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)を行う。「キャリアの自画像(ポートレート)」を描くマネジメントツールや「レゴブロック」を用いたゲーム研修、就労観の傾向性診断「キャリアMQ」をコア商品とする。プロ論・キャリア論を教えるのではなく、「働くこと・仕事の本質」を理解させ、腹底にジーンと効くプログラムを志向している。


 2012年春、社会人になって職業に就かれるみなさん、おめでとうございます。その門出にこの記事を贈ります。

 私たちはひとりひとり、何かの職業を選び、1年、5年、10年、20年とかけて、職業人生を歩んでいきます。その間、どんな種類の仕事をしたか、どんな経験を重ねたか、どんな役割を果たしたか、どんな成果を残したか、これら全部をひっくるめて「キャリア」と呼びます。キャリアとは簡単に言えば「仕事を通しての生きざま」「職業を通じて織っていく人生模様」です。それは、みなさんひとりひとりのオリジナルなもので、尊いものです。

 キャリアは航海に例えることができます。航海に大事なものを考えることによって、「この先、自分らしくキャリアを歩んでいくために何が必要か」が見えてきます。

 さて、航海に大事なものは何でしょうか? 私は次の3つを挙げます──「船・羅針盤(コンパス)・目的地入り地図」。その3つをキャリアに当てはめるとこういうことです。

1.知識・能力を存分につけて自分を性能のいい「船」にする(=「自立」的になる)

2.どんな状況でも、自らのぶれない判断を下せる羅針盤を持つ(=「自律」的になる)

3.地図を持ち、職業人として目指すべき「目的地」を描くこと(=「自導」的になる)

 では、それぞれについて詳しくみていきましょう。

「船を造れ」――まずはきちんと能力・経済力・体力を付ける

 まず、航海になくてはならないものは何といっても「船」です。みなさんはこれから大海原に出ようとする時に、手漕ぎのゴムボートがいいですか、それとも馬力の強いエンジンを積んだタンカーがいいですか? ──答えは言わずもがなですね。性能が良く、頑丈にできている船がいいに決まっています。

 キャリアにおいて船は誰かが用意してくれるものではありません。船はあなた自身です。これから長く続くキャリアの旅路を渡っていくためにまず大事なことは、自分という船の性能を高め、強いハードウエアを持つことです。すなわち、仕事に関わる知識や技能を積極的に身に付けること、ライフステージに従って生活をきちんと維持発展させていくための経済力を保つこと、そして健康管理に気を配るということです。

 知識や技能には、ビジネスマナーやPCスキル、語学のように基盤的なものもあれば、職種や業界に特有の専門化したものもあります。また、マネジメント関連やリーダーシップ関連のように横断的で高度なものもあります。さらに、自分という船を特徴付けるためには、行動特性(コンピテンシー)を強めていくことも大切です。例えば、思考の柔軟性がある、交渉力に長けている、チームビルディングがうまい、ストレスマネジメントができる、などです。

 こうして一職業人として、他に依存することなく、能力的にも経済的にも独り立ちすることを「自立」と言います。まずは自分という船体をしっかり造る(=自立する)ことが、入社後、数年間の第一のテーマです。

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