「居留守」という言葉を聞くと、とても感じが悪い態度に思えますが、会議の出席者へ迷惑をかけるくらいなら、居留守を使う方が得策です。
電話は便利ではあるのですが、その一方で、『相手の都合を一切考えない、割り込みをしてくる道具』なのです。誰か1人が電話に出るために中座したり、進行を妨げたりすると、会議のリズムが狂ってしまい、良い話し合いができないのです。
電話がかかってくると、ついつい「出ないと悪い」と、という気になってしまいますが、実際「どうしてもすぐに対応しないといけない!」という仕事は消防士など特殊なものを除いてそれほど多くないはずですし、会議が終わってから電話をしたって、何も支障がない仕事がほとんどです。
会議に参加するために、みんな仕事をやりくりして、同じ時間に同じ場所に集まっているのですから、まずは会議を優先しましょう。
「(自分が)電話に出てる間に(会議で)決まったことについては必ず従う」ということに同意ができている場合は、悪くない選択です。
しかし、実際にそれを守ることは難しく、電話から戻ってくると、「そんな決定、私は聞いてない!」と言い出され、また同じことを話し合うことが多いです。
電話の相手がお客様だったり、上司だった場合、いったん話し始めたら、なかなか「すみません。時間なので電話を切ります」とは言えません。運用できれば良いですが、残念ながら守ることは非常に困難です。
会議は何のために行うのでしょう? もちろん、みんなの知恵を集めて、最良の結論を出すことがひとつです。しかし、会議の目的はそれだけではありません。
もう1つ大事なことは、みんなが熱中して話し合いをすることによる「一体感」や、決まったことに対する「納得感」を得るために行います。なぜならせっかくいい結論が出せても、みんながやる気になっていないと、実行に移す力が弱く、企画倒れになりがちだからです。
みんなが熱中できる会議をするためには、途中で会議のリズムを崩すようなことをしてはいけないのです。特に途中で電話に出ることは、「この会議は大して大事じゃないんだ」と、周りに宣言しているようなものですから、気を付けましょう。
ネクストスタンダード代表。1976年東京生まれ。北里大学水産学部卒。大学卒業後、民間企業の研究所に入社し、「マグロの保存剤」の開発に携わる。
入社2年目のとき、上司から「マグロの保存剤の開発を成功させるには、お前は一回マグロ船に乗ってこい」と理不尽な命令をされるも、断りきれずマグロ船に乗せられる。
嫌々乗ったマグロ船であったが、人間関係がギスギスしやすい閉ざされた空間だからこそ、素晴らしいコミュニケーション術がたくさんあり、笑顔で働く漁師たちに感銘を受ける。
マグロ船を降りたあと、漁船での体験を元にファシリテーション術を自社に導入し成功。その後独立し今に至る。代表著書に『活きのいい案がとれる!とれる!マグロ船式会議ドリル』(こう書房)、『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』(マイコミ新書)がある。雑誌などの掲載多数。
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