「勉強する人が一番怖い」――率先して勉強しまくる医師CTO鳥瞰図(2/2 ページ)

» 2010年06月10日 12時11分 公開
[金武明日香, 岩井玲文(撮影) ,@IT自分戦略研究所]
@IT 自分戦略研究所
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 次は、化粧品会社のIT部門で、システム開発やネットワーク管理などを担当していました。ここも10カ月で辞めて、医療系企業のITを支援するコンサルティング会社を起業しました。当時は開発と営業の仕事を同時にこなしていましたね。営業の仕事は、わたしに「経営」という視点を与えてくれたので非常に有意義でした。とはいえ、「わたしはやはり開発の方が好きだ」ということを実感しました。

 わたしは、人の4倍の速度でやる「4倍ルール」を心がけています。よく、「3年は同じ職場で働く」といわれますが、3年分の成長を4倍速で吸収したかったのです。3年=36カ月を4倍速で過ごせば、9カ月で済みます。比較.comへ来るまで、1つの企業に1年以上いた経験がありませんでしたが、退社時に「やり残した」「勉強し足りない」とは思いませんでした。

勉強しようとする人の邪魔をしない

 いまは比較.comのCTOとして、開発部隊を束ねてWebサイトを開発・運営しています。業務の半分は「開発」に充てています。わたしは技術もマネジメントも同じぐらい好きで、バランスよく両立できていると思います。

 リーダーとしてもっとも重視しているのは「勉強しようとする人の行く先を妨げない」ことです。たとえ部下が学んでいるものが業務に直接関係のない、もしくは必要がないことでも、このポリシーは貫きます。

 わたしは、「勉強する人」が一番怖い。いまは自分が多くの知識や技術を持っていたとしても、勉強する人にはいつか追い越されるかもしれないからです。「勝てないかもしれない」、これはわたしにとって非常に怖いことです。しかし、わたしはそんな「怖い部下」をたくさん持ちたい

 勉強しない人は、つまらない仕事を普通にこなすことしかできません。しかし、勉強する人は違います。どんなにつまらない仕事でも工夫して面白くしようとするから、成長が早い。わたし自身、勉強しながら成長してきました。業務改善の仕事は、どの企業でもほぼ同じ作業を繰り返します。しかし、わたしは同じ方法でやろうとせず、いつも違う方法や技術を使っていました。ルーティンをルーティンにしたくなかったのです。

 わたしは、道に迷ってもほとんど元の道に戻ろうとしません。途中まで戻れば楽なのは分かっていたとしても、です。「一筆書きでゴールを見つけたい」、これがわたしの信条です。道に迷ったら、待ち合わせに遅刻してでもいいから別のルートを探して楽しみたい。ハプニングを楽しみに変えながら、常に前へ前へと進むことで、問題を解き続けたいのです。

勉強する人だらけのチームを作り上げたい

 わたしの理想は「勉強する人だらけのチーム」を作り上げることです。「追いつき追い越され、互いに切磋琢磨(せっさたくま)して成長する」状況がチームに生まれたらいいですよね。そうしたら、自分はいずれマネジメントに専念したいと考えています。

 ただ、課題もあります。例えば、「従業員から相談を受けすぎる」ことです。成長するためには、「人に頼る」ことが必要です。わたしはいまでも、昔お世話になった人やミクシィのメンバーなどによく相談を持ち掛けるし、従業員から相談を受ける際はオープンな姿勢を見せています。しかし、わたしを頼りすぎてほしくない。人を頼ることは成長のために必要ですが、ときには頼らずに自力で解決することも必要です。もう少し突き放した方がいいのかもしれない、と最近は考えています。

勉強しまくるリーダーとして先頭を走る

 いま、わたしはマルチスレッドプログラミングやダイナミックプログラミングについて勉強しています。ほかにも、社内勉強会を行ったり、ミーティングで流行の技術を紹介したりと、いろいろな試みを行っています。

 スキルは「業務」の中だけで伸ばしたいとは思っていません。なぜなら、業務の幅がスキルの限界になるからです。伸び止まりたくないので、業務以外のことにも挑戦し続けてスキルを磨き続けたいと思います。いまはがむしゃらに技術を勉強していますが、いずれはコミッタとしてオープンソースの世界に技術を還元したいですね。

 スキル面で追いつかれるのは怖いですが、いつかはわたしに追いついてもらいたい。そして超えてもらわないといけない、と思っています。いまはどんどん勉強してどんどん挑戦し続けて、先頭を走っていきます。

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