比較.comの中尾彰宏CTOは、ミドルウェアやSaaS型システムの開発を自ら行いながらチームマネジメントを行っている。もともと医者になるつもりだったという中尾さんの仕事観に迫る。
この記事は@IT自分戦略研究所のリーダーインタビュー連載「鳥瞰図」より転載したものです。
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もともと、わたしは医者になるつもりで医学部に入学しました。遺伝子が好きで好きで仕方がなかったので、医学部に在籍している間は遺伝子を解析する日々を送っていました。
同時に、わたしはプログラミングも好きでした。遺伝子研究に必要な解析用プログラムは自分で組んでいましたね。そんなことをする学生はほかにいなかったので、わたしは少し変わった医学部生だったのでしょう。
就職活動を始めたのは2005年、ライブドアショックの少し前でした。IT業界への就職活動は、興味本位によるところが大きかったと思います。ところが、就職活動を続けているうちに「医者になるか、エンジニアになるか」を本気で考えるようになりました。
わたしはIT業界に「未来」を感じました。Googleマップを見て、「Webではこんなことができるのか!」と驚いたことを覚えています。また、当時はブログやSNSがはやり始めたころで、勢いを感じました。何より、ベンチャー企業で活躍するエンジニアたちとの出会いが大きかったですね。 彼らと話をするうちに、「医者になるのもいいけれど、IT業界で働いてみたい」と思えました。
わたしは遺伝子とITが大好きですが、好きな理由はまったくといっていいほど違います。遺伝子には、生命体の歴史がすべて刻み込まれています。人間の遺伝子や植物の遺伝子、単細胞生物の遺伝子それぞれに歴史があって、読み込めば読み込むほど新しいことが分かります。遺伝子を見ていると「自分のルーツはここにある」と思えるのです。
ただ、遺伝子は情報が膨大にありすぎて、未知の領域が圧倒的に多い。しかも、まったく自分の思いどおりになりません。遺伝子に比べると、システムはプログラムを書けば、自分のいうことをきちんと聞いてくれます。そこがITの魅力ですね。
IT企業を何社か受けたあと、イーマーキュリー(現ミクシィ)への入社を決めました。それは「エンジニア1人あたりのパフォーマンスが、最も大きい会社だったから」です。企業を比較するため、PV規模をAlexaランキングで調べました。イーマーキュリーは当時5人ほどしかエンジニアがいなかったにもかかわらず、膨大なPVをさばいていました。
就職活動中に出会った先輩エンジニアや経営者からは、「医者になった方がいい」とアドバイスをもらいました。一方で、友人たちは「お前ならやれる。普通の医者になる器じゃない」といってくれました。かなり悩みましたが、2006年2月に医師の国家試験を受験し、3月には入社しました。
国家試験の合格発表は、2ちゃんねるの掲示板で見ました。厚生労働省のホームページは、合格発表の日にはアクセス過多で閲覧しにくいんですよ。だから、掲示板経由で合否を知る人はけっこう多いのです。「Web企業でコードを書いているエンジニアが、医師免許の合格発表を見る」という経験はなかなかありませんね。あれは面白かったです。
わたしが入社したころのイーマーキュリーはとにかく勢いがあって、毎月エンジニアが増えていました。一緒に働いていたエンジニアもすごい人ばかり。あそこまで勢いがあった現場をほかに知りません。わたしはすぐに現場に配属され、2006年12月に退社するまでとにかく働きました。退職した理由はいろいろあったのですが、仕事が楽しすぎたことが大きかったですね。もっと厳しい場所でいろいろなことを試したかったのです。上場したことも、原因の1つであるかもしれません。
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