ロッキング機能がさらに高機能化したのは、1992年の「FC-9シリーズ」。ニーチルトロッキングに代えて、アンクルチルトリクライニングを採用した。チルトの支点がひざではなく、足首(くるぶし)になったのだ。
ニーチルトロッキングの場合、足首の角度があまり変わらず、背もたれを傾けた際に、太ももの裏側に圧迫感を与えていた。座面を前後に動かす機構などを利用したアンクルチルトリクライニングでは、背もたれを倒すと、ひざや足首の角度も広がるようになっており、より圧迫感を排除したという。
書類仕事では前傾姿勢で書類に書き込んだりする作業が多いが、PC作業では自分とディスプレイやキーボードとの間にある程度の距離を置くのが普通。このため、作業時間が増えると背もたれに寄りかかって後傾気味の姿勢で作業するようになるという。PC作業が増えると、ロッキング機能が重要になってきた、というわけだ。
マイクロソフトのWindows 95が登場し、PCが一般への普及期に入ったのは1995年。このころ登場した岡村製作所のチェアが「CX Chair(CXシリーズ)」である。従来機種のFC-9シリーズで培ったアンクルチルトリクライニングを搭載した普及モデルで、背もたれから座面へ一体構造のクッションを採用した。
1996年には部位によってクッションの硬さを変えた「SX Chair」が登場。上下の高さを調整できるひじ置き(アジャスタブルアーム)をオプションで選択できるなど、キーボードでのタイピングを意識した設計になっている。
1990年代後半に入ると、PC作業を念頭に置いた機能面に加えて、デザイン性も追求するようになった。真っ赤な展示が目を引いた「スプレージ」は1997年に登場したワーキングチェア。1人1台が当たり前になったPCでの作業に対応するため、より安定した姿勢を維持できるよう、背もたれの肩の形状がそれまでの“なで肩”から左右に張り出て角張った形状になった。高さの調整が可能なランバーサポートもこのころ登場した。
1994年にハーマンミラーが発売したアーロンチェア。メッシュ地のワーキングチェアとしては代表的な存在だ。2000年、このアーロンチェアに対抗して「究極の座り心地を目指した」(浅田さん)のが「ERCIO(エルシオ)」である。リクライニングの範囲を調整できる機能を搭載し、自分だけの座り心地を設定できるようになっている。後傾での作業を意識したオットマンやパーソナルテーブルも同時発売した。翌2001年にはERCIOの廉価版「navio(ナビオ)」も登場している。
2003年に発売したメッシュ地のワーキングチェアは「Contessa(コンテッサ)」だ。イタリアのGIUGIARO DESIGNとのコラボレーションで生まれたチェアで、背もたれを支えるフレームがむき出しになっているなど当時としては斬新なデザインが話題を呼んだ。
デザインだけでなく、標準でランバーサポートや、座面の奥行き調整機能、高さ調整可能なひじ置きを装備。ひじ置き先端のレバー操作で座面の高さ調整やリクライニングの固定が可能になっていたりとデザインだけでなく、多機能さでも注目を集めた。
同じ2003年に登場した「feego(フィーゴ)」は背もたれにハンガーを取り付けられるようになっている。2004年にはfeegoの廉価版である「Carrozza(カロッツァ)」、2008年には背もたれにメッシュ張りを採用した「feego mesh(フィーゴメッシュ)」も発売した。
2006年に発売した「Duke(デューク)」は、アーロンチェアに対抗したERCIOの後継チェア。クッションとシェル、アルミフレームを組み合わせた「アクティブバック機構」によって座り心地を向上させた。また、Contessa同様にひじ置き先端のレバー操作で座面の高さなどを調整できるようになっている。
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