いったい、いつの間に
次に部長が聞いてきそうなのは、切り替え後の話だ。谷さんのために完全に理論武装しろ。まずジンジにその観点で漏れがないか確認して、先に手を打っておけ。
ほぼ契約が取れると思っても、安心してはいけません。担当者がOKでも、決裁者はまだまだ慎重なものです。担当者と人間関係ができていれば、一緒になって「決裁者対策」をしましょう。それがクローズ(契約締結)への最後の詰めであるし、担当者とさらに人間関係を深める道でもあります。
主人公・吉田和人のモデルになった吉見さんに、大口兄弟が契約を取れた理由を聞いたときに、まっさきに教えてくれたのが、この話でした。
いったい、いつの間に
もうこの案件の成約に賭けるだけだ。和人の決心は揺るがないものとなった。
和人は、竹田食品との契約を取るために、この月の営業所のリソースをすべて投入する決心をしました。
土壇場では、この決心が大切です。ここに至って、ほかでもちょこちょこ稼ごうと思っていたら、おそらく「奇跡」は起こらなかったことでしょう。
これからもよろしくな
部下に仕事をさせるにはアメとムチの使い分けしかない。考えるのは自分たちだけで、欲しいのは優秀な手足。そう考えないとやっていられないようなプレッシャーの中で田島は日々を過ごしている。
物語には、悪役が必要です。筆者は田島という人物を悪役として設定しましたが、実は田島のような人を嫌いではありません。
和人が述懐しているように、組織を統括する立場の人は、本当に孤独なのです。上にいけばいくほどそうなります。責任の大きさがそうさせます。責任という意味では、組織の大きさは関係なく、中小企業のオーナーも同様に孤独です。
会社に勤めていると、経営者の判断がバカらしく見えることが多く、自分ならばこうやるのにと考えがちです。しかし、その多くは正論だとしても、責任のある人間が取り得る判断ではないことが多いのです。
リーダークラスでも、会社は間違っていると良く言う人がいます。それははたで見ていて決してかっこいいことではありません。まずは経営者の立場を思いやりましょう。そうしつつ、自分の信じることを一生懸命やる人間こそが部下からも尊敬されるのです。
これで「大口兄弟の伝説」編の解説も終わりです。吉見範一さんをモデルにした物語と解説はいったん終了となります。
次回からは、ある中堅の運送業の社長をモデルとした物語を書きます。子供のときに人間不信に陥り、他人と口を利くのが嫌いだった男が、スタッフ200人の運送業の社長になり、人間としての幸せを手に入れるまでの人生の軌跡をお伝えしようと思っています。引き続き、よろしくお願いいたします。
なお、前章の「震えるひざを押さえつけ」編が『奇跡の営業所』というタイトルで単行本になりました。3月3日にきこ書房から発売予定です。物語のイメージにあったすばらしい写真が満載の美しい本です。こちらもよろしくお願いいたします。
2月22日に、大好評の「出版・連載の夢実現セミナー」の第3回目を開催します。
出版のハードルは、意外と高くありません。本セミナーは、過去30名受講していただいておりますが、そのうち29名が自分にもできそうだとアンケートに回答してくださいました。
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大学では日本中世史を専攻するが、これからはITの時代だと思い1987年大手システムインテグレーターに就職する。16年間で20以上のプロジェクトのリーダー及びマネージャーを歴任。営業企画部門を経て転職し、プロジェクトマネジメントツールのコンサル営業を経験。2005年にコンサルタントとして独立。2008年に株式会社ITブレークスルーを設立し、IT関係者を元気にするためのセミナーの自主開催など、IT人材の育成に取り組んでいる。
2008年3月に技術評論社から『SEのための価値ある「仕事の設計」学』、7月には翔泳社から『ITの専門知識を素人に教える技』(共著)を上梓。冬には技術評論社から3冊目の書籍を発売する予定。
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