開くときにちょっと戸惑う折りたたみのギミックについても試行錯誤した。立石さんが取り出したのは某社のPDA用外付けキーボードを元に作成したモック。たたまれたキーボードの両脇を引っ張ると、中央部分がせり上がってくる仕組みで、ガシャンガシャンと小気味いい。だが、このギミックもボツになった。
「企画段階では開閉方式のほうが好評でした」と立石さん。ではなぜボツになったのか――。実は繰り返し開閉すると、開閉に失敗するケースが発生したからだ。「このキーボードを十数個購入して耐久テストを実施しましたが、その多くが1000回も開閉しないうちに破損してしまったのです。また1回でも開閉に失敗するとキーボード自体が破損することもありました」
キングジムは文具業界の老舗。「いつも使う文具がすぐ壊れてはいけない」という考えから、開閉方式はあきらめざるを得なかったという。「ポメラは耐久性にも気を使っていますので、パタンと折りたたむ構造を採用しました。開閉式のガシャガシャ!! というのもカッコイイのですけれど……」
そんな文具メーカーの開発ポリシーからか、キーボードだけでなく本体の頑丈さにも自信がある。アルミやステンレスなどの金属部品を多用し、キーボードの強度を増すために「ステンレスの筋も入れました。ぴったり閉じる必要はありませんが、たわみを減らしたかったのです」
折りたたみ式のキーボードを開く側、つまり右側のキーボードを支える可動部分には衝撃に耐えるために亜鉛合金を採用。「マグネシウム合金よりも、しなやかなで強い亜鉛合金を使うことにしました」。そんな本体の強度は、75センチの高さから落としても壊れないほど。「目の前でどーんと落としても大丈夫です」と自信を見せる。
塗装にもこだわった。最初は金属部分を強調することも考えていたが、最終的には黒に塗装した上で薄いラバーをふきつけたデザインに落ち着いた。「いつも持ち歩いてほしいので、手に持った感触を大事にしました」という。
「ブログが流行る以前、テキストサイトを運営していた」という立石さん。「サイトに書くネタを探しに、よく外出していたんです。当時は手帳を持って歩いてましたが、今ならポメラでどこでも書けちゃう」と笑った。
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