以上のように、これまでお話ししてきた怒った方がいい場面は、「権利を守る時」「自分を奮い立たせる時」、そして「本気さを伝える時」の3つがありました。ですが先ほども言ったように、私は基本的には、怒り以外のほかの方法で伝えるか、寂しさや認められたいという思いは別の建設的な形で満たしてもらいたいと思っています。
しかし、怒れないのは、実は非常に不自由で、感情的に拘束されます。怒ることしかできないのも同じです。一番いいのは、怒れて、しかも怒るかほかの方法をとるかを選べること。そして必要な時には怒ることです。
特に、3つ目の本気さを伝えるという姿勢が、結果的に職場にも本気さを伝えていくことになります。最近の上司にはこういった姿勢があまりない。経営者や自営の人だったら、自分の会社の売り上げが自分の人生に直結するので本気がハッキリ表れますが、サラリーマン、従業員として管理職をやってる立場では、そんなに強く出せませんね。
そして、ついつい我慢して、悶々(もんもん)としているものを新橋のガード下で吐き出す、という構造になっています。怒りを使って、本気さを伝えてみてください。ただ、これはいつも怒っている人には効果がありません。その場合はオーソドックスなコーチングに立ち返って、怒り以外の方法で伝えてください。
最近、若い人をカウンセリングしていて多いのが、「小さいころに親に怒られなかったから、本当は愛されていないんじゃないか」と思う子たちです。つまり、本気で怒ってくれると、本気で愛されてる感じがするのです。
実は怒ってほしいと思っている若者は多いのです。「自分のことをこんなに本気で思ってもらえている」と感じるような怒られ方を望んでいるのではないかと思います。
ですから、怒る時は、ただやみくもに「お前これじゃ駄目だよ」というような怒り方ではなくて、「本当に僕のことを考えてくれている」と、相手が思える怒り方をしてもらいたいと思います。そして、目先の業務や課題のことで怒るというよりは、自分のことを信じてくれていると感じられるような怒り方をしてもらいたい。
大事なのは、本気さを伝えることです。
次回は、失敗しない効果的な怒り方をアドバイスしていきます。
ピークパフォーマンス 代表取締役
平本あきお(ひらもと あきお)
1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は、『すぐやる! すぐやめる!技術 ― 「先延ばし」と「プチ挫折」を100%撃退するメンタルトレーニング』。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。
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