「私は本気だ!」――を怒りで伝えるべき場面「正しい」怒り方、教えます(1/2 ページ)

部下がどうも自分のことを舐めている。そんな時に効果的なのが、どれだけ真剣な思いでいるかを相手に伝えるため、怒ることです。

» 2008年09月25日 11時06分 公開
[平本あきお(構成:房野麻子),ITmedia]

 怒った方がいい場面には、「権利を守るため」と「自分を奮い立たせるため」の2つがあることをお話ししてきました。そして3つ目は、「本気さを伝えるため」です。

 私が一番推奨したいのはこれです。私は怒らない方法をずっと提唱していますが、これは唯一お勧めする怒りの使い方です。



 怒りを使って自分の気持ちを伝えた方がいいケースを紹介しましょう。

「成長してほしい」――不真面目な部下に本気で怒る

 1つは、製薬会社に勤める30代後半の男性Aさんのケースです。

 事業部では比較的上の立場にいて、後輩や新人の指導もします。そのうちの1人、部下Bさんは性格はいいし頭もいいし、言ったことは割と素直に聞くのですが、仕事の締め切りを守らない。デートがあるといって帰ったりミーティングに遅れてきたりします。話を聞いてみると、「昨日、夜遅くまで○○の資料を作っていたから、朝起きられなかったんです」など、一応Bさんなりの理由がある。

 そこで、Aさんは部下指導をもっとちゃんとやりたいということで、コーチングを勉強しました。しかし、コーチングは相手の立場に立って指導しましょうというものなので、今までも十分、人の立場に立って考えているAさんには、実はあまりふさわしくなかったのですね。

 実際、Aさんと話をしていると、「彼の言い分も分かるから……」「あの資料は大変だから、ミーティングに遅れるのも分かる」「年ごろだからデートくらいしたいでしょう」「あのころにあれだけのノルマだったら、僕だって達成できませんでしたよ」と、もう何かに付けBさんの立場に立ち過ぎています。

 一方、BさんはBさんで、Aさん以外の人から与えられた仕事は期限を守っていることが分かりました。どうもAさんはBさんに舐められているようなのです。Aさんも、それはなんとなく分かっているのですが、露骨に舐めているわけでもないので、怒るに怒れない。

 ただ、事業部全体の仕事の流れに差し障ることは注意して、これだけはやってほしいということを伝えた。すると、その時は素直に「はい」と言うことを聞くけれど、やっぱりやってこなかったり忘れたりする。こうなってくると、本気で怒るしかありません。

 Aさんには、一度Bさんの立場になって、真剣に怒られた場合を想像してもらいました。「僕は真剣に君と仕事をしていきたいし、君に一人前になってもらいたい。でも、君の本気さが感じられない。こうやって怒るのは辛いけれど、僕がどんな思いでやっている分かってほしい」と、上司から真剣に言われたらどう感じるかを想像してもらいました。

 するとAさんはハッと目が覚めて、「こんなふうに自分の気持ちを言ったことがなかった」と気が付きました。本気で付き合いたいとか、本気で成長してもらいたいという気持ちを伝える目的で怒るのは効果があります。

「期待している」――デキるはずの部下に本気で怒る

 もう1つお話ししましょう。商品企画をやっているCさんのケースです。

 Cさんは面倒見のいい人で、新人が伝票整理や雑用をもたもたやっていると、手伝わずにはいられないような人です。でも、本当はアイデアを考えたり、プロジェクトを運営していくような仕事に時間を割かなければいけない立場です。それなのに、アルバイトがやってもいいような伝票整理までやってしまう。

 上司から、生産性が落ちるから、自分の仕事をやってくれと言われても、その時は「すみません」と言いながら、そのうち、また雑用をし始める。彼女なりに自分の仕事をしたい気はあるのだけれど、もたもたやっているのを見ていられないのですね。

 こういう場合にも、上司にはCさんを怒る決意をしてもらいます。「君には可能性があるし、伝要整理は君の仕事ではない。もちろん、伝票整理が悪いわけではないけれど、もっと本来の能力を発揮してほしい。僕は本気で怒っている。君は本当はもっとできるはずで、君が自分の仕事をしっかりやってくれる方が部下も伸びる。もっと自分を信じて、自分の可能性を発揮してほしい」というような感じで怒ってもらいました。

 「君の能力はそんなものじゃないだろう」という怒り方だったら、怒られた人だって嬉しいじゃないですか。Cさんも目が覚めたといって、それからは雑用を他の人に任せて、自分にしかできない仕事に集中し始めました。

 これが、やさしく言うだけだったら、上司の気持ちは伝わらなかったと思いますね。「私は本気であなたの可能性を信じてるんだ」という真剣な気持ちを伝えるのに、怒りは効果があります。

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