無意識的な目的がある場合の対処法としては、まず、症状が出た直後に、症状がどの時点から起きているのか、また、何が起こった後にその症状が緩やかになっているかを、自分でチェックしてほしいのです。
例えば、こんな感じで振り返ってみてください。
「気分が憂うつになりだしたのは昨日の午後くらいだった。そういえば、その時にエリアマネージャーが来るという話を聞いていた。症状が軽くなったのは夕方くらいだ。何があったか。エリアマネージャーがやっぱり今日は来ないことになった。ああ、自分はエリアマネージャーと会うことに気がめいっている」
また、出社しようとすると、急におなかが痛くなる人もいますね。自分がどういう時に痛くなるのか――その理由や基準を見つけたら、たぶん解決できます。
以前、「アドラー心理学的処世術」でも紹介したある30代の女性の例です。
いつからうつ症状が出だしたか聞くと、もう何年もですと答え、いつうつになりますかと聞くと、いつもですというような状態です。そこで、うつになった後に何が起きているかを聞いていくと、ダンナさんが「大変だから、今日は会社を休むよ」と言って、しばらく一緒にいてくれて、それでうつが少しラクになるといいます。要は、彼女はダンナさんにいてほしいんですね。
ある20歳の女子大学生の例です。
特にどんな時うつ状態になるかを聞いていくと、最近なったのは先週の水曜日。朝と昼は平気だったけれど、3限が終わったあたりから憂うつになりだしたと言います。その時何を考えていたかを聞くと、「今日はクラブの後輩に、楽器の弾き方教えなくちゃダメなんだなと考えていた」と言います。そのあたりからうつになり、教えている時が最悪の状態だったといいます。
そして、その後どうなったか聞くと、「ちょっとラクになりました」と。その頃、何をしていたかを聞くと、後輩に教えるのは終わっていたと。彼女は、後輩に教えるということに関して、強いプレッシャーを感じていて、うつになったということが分かります。
後輩に何か教えなくてはいけないとか、何かをやらなきゃダメだとか、プレゼンをしなくちゃいけないということは、仕事の場面でもよくありますね。症状が始まった後、何が起こったのか、また、どういう出来事があると、だんだん症状が緩和されているか。そこを調べることで、本人も気が付かない無意識的な目的を見つけることができます。
意識していなかった目的を自分で見つけることができたら、今度はうつ症状を起こすのではなくて、別の手段で目的を得るようなアイデアをいろいろ出してみてください。
例えば、ダンナさんが気に入りそうな服を着ておしゃれをしてみるとか、ダンナさんの趣味に付き合ってみるとか、うつ以外の方法で、ダンナさんの気を引くようにしてみてください。
また、先ほどの女子大学生だったら、どんな部分が自分で気になっているのかを知って、それが例えば、自分で見本を見せるところが気になっているのだと分かれば、見本を見せずに、基礎的なことを教えるという方法で対処することができます。教えること自体を止めるというわけではなくて、比較的プレッシャーにならない方法を考えればいいのです。
プレゼンでプレッシャーを感じることに関しては、いい状態で臨めるようにする方法など、いろいろな解決パターンがあります。私が書いた『心のスイッチ』などを参考にしてみてください。必ず方法が見つかるはずです。
次回は、過去の耐え難い出来事に反応してうつに陥るパターンと、その克服の仕方についてお話しします。
ピークパフォーマンス 代表取締役
平本相武(ひらもと あきお)
1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。
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