太陽発電などによる省エネ型住宅「光熱費ゼロハイム」、通称「おひさまハイム」を販売する積水化学グループ。環境分野でのトップ企業を目標に掲げる「環境トップランナープラン」とは?
製品提供と、生産プロセスに関する事業活動における配慮、および自然保護活動といった3つの観点から常に環境を考えてきた積水化学グループは、2005年に中期ビジョン「環境トップランナープラン」を策定した。これは、2010年までに達成する目標を掲げたもので、高まりを見せる環境に対する社会の要請に応じて活動範囲を広げるため、グループ内でのさらなる意識浸透を狙ってネーミングされたものだ。
グループ全体の推進役である積水化学工業。そのCSR部環境経営グループグループ長・桶谷省さんは、「以前は『ステップ05』という名の下に取り組みを進めていたのですが、目標達成のスピードが速かったことと、それを定めた当時に比較して社会の意識が高まったことなどから、予定より1年早く次の中期目標を定めることになりました。今回目指すのは“トップランナー”ですから、チャレンジングな目標設定、多面的視野、環境リテラシー向上に努めることを前提に、『環境貢献製品売上の向上』『CO2排出量削減の取り組み強化』『社員一人ひとりの意識の向上』という3つの基本方針を固めました」と話す。
同グループの2010年度目標は以下の通り。
− | 2010年度目標 | 2008年度目標 | 2006年度目標 | 2006年度実績 |
---|---|---|---|---|
環境貢献製品売上(総売上高比) | 40% | 25% | 14% | 14.7% |
CO2排出量削減(1990年度比) | 10%削減 | 8%削減 | 6%削減 | 6.8%削減 |
廃棄物発生量削減(1998年度比) | 67%削減 | 50%削減 | 40%削減 | 37%削減 |
2006年度の目標に対する実績ではすでにクリアしている項目があり、成果が見て取れる。その要因は何だろうか。1つには、「社会全体の環境負荷低減に大きく貢献していきたい」という企業姿勢が貫かれているからだろう。しかし、一部の部署だけが積極的に活動を推進していても、全体の足並みがそろわないという壁に突き当たるのが企業の常である。まずは、同グループのこれまでの具体的な取り組みに着目してみよう。
エコノミーとエコロジーの両立を目指す“環境経営”をビジョンに掲げたのは2003年。そのころから、「マテリアルフローコスト会計」導入の検討が始まる。これは、廃棄物やエネルギーロスなど負のコストも評価する手法で、生産プロセスにおける各工程を細かく区切って検討し、不良品製造のムダなども省くことができる。前出の桶谷さんが各事業部門へ導入を提案したのだが、当初は反発する現場が多かったという。導入のお願いを重ねて、試算により3割もムダが削減できると伝えることで次第に受け入れられるようになり、今ではグループ全体へと取り組みが広がっている。
また、特に生産プロセスの事業活動においては、CO2の排出削減にかなり前から着手しているため、現場での意識は高い。国内の10事業所ではCO2を排出しない太陽光発電システムが設置されており、オランダの3事業所では風力発電による電力を調達している。また、そうした中からはさらに新しいアイデアも生まれる。工場内のフォークリフトに使われている社員食堂から出た廃油を使ったバイオマス燃料もその1つだ。
一方、1997年の創立50周年記念事業では、地域における自然保護活動のリーダーを育成するための教育研修「積水化学自然塾」が実施された。現在も毎年受講する従業員がおり、活動を継続しているという。
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