「自分で自分の思考や状態を認識する能力」のことを認知科学で「メタ認知」能力と言います。Wikipediaを見るとメタ認知の項にはこんなことが書かれています。
以下の質問に「はい」と答える数が多いほど、メタ認知能力が高い。
今回のテーマに関係がある項目は、太字で示した4と9です。いずれも、「自分自身の好調・不調をモニタリングする意識」に関する項目ですね。これができないと、「無駄な努力」を長々と続けてしまって、時間をかけているわりにはさっぱり成果が上がらない、という落とし穴にハマりがちです。実際、ロジカルシンキング系の研修をしていると、ちょうど9番の「考えが混乱した時」という状態を自覚できずに堂々巡りの議論を続けているシーンをよく見かけます。
では、どうすればその「メタ認知」能力、「自分の頭の働き具合をモニタリングする意識と判断基準」を持てるのでしょうか?
私の経験上、そのために大事なキーワードが2つあります。それは
の2つです。引き続き、それぞれどんな意味なのかを書きます。
突然ですが、運転をしたことのある方にお聞きします。トップギアでアクセル全開、限界の最高速度まで出したことはありますか? レースやってます、という方を除けばまずありませんよね。ということはつまりほとんどの場合、
わけです。こう言うと、「いや、リミッターついてるから時速180キロメートルまでしか出ないのは知ってるよ」 という声も上がりそうですが、そのリミッターに達する180キロも普通の人は出しません。その「知っている」は「知識として知っている」だけで、実際に経験して確かめたものではないのです。限界というのはやはり実際に試してみないと分かりません。いや別に車で試すことを推薦はしませんが。
同じことが、頭の働きについても言えます。日常生活をしている分には、人が「限界まで考え抜く」ことを求められるシーンはほとんどないので、放っておくと「時速20キロ」程度の状態が普通になってしまいます。すると、40キロ程度でも大変な高速に感じますから、「これで十分スピードを出した(考えた)」と思いこんでブレーキを踏んでしまうのです。本当は100キロ以上出せる潜在性能があっても、です。
図1がそのイメージで、Aが100%の潜在能力です。ところが人は日常生活ではあまりアタマを使いませんので、Bのように10%ぐらいで生活できてしまいます。それが普通だと思いこむと、Cのようにちょっとがんばって20%ぐらいになっただけで
と、それ以上やらなくなってしまうんですね。これは別に怠けているのではなく、本人が本当に限界だと信じ込んでいるので、なかなかこの「無意識の自主規制の壁」を突破できません。
ところが、一度でもAのような「本当の限界」までアタマをフルパワーでブン回した経験があると話は違います。それがあれば、Cではまだまだお話しにならないノロノロ運転だということが理屈ではなく身体感覚レベルで、自分の実感として分かりますから、そこでブレーキをかけずにさらにアクセルを踏み込めるわけです。結局その差は「本当の限界を実感したことがあるかどうか」にかかっています。
では、一度でも「本当の限界」を実感するにはどうすればいいのか、それが問題です。ここで大事なキーワードが「熱中」です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.