続・「自分との約束」を守るには?【解決編】シゴトハック研究所

自分との約束を守ることは意識としては理解しても、実際に行動するのは難しいものです。そんなときには、うまく道具を使って、「自分の時間」の所有感を持てるようにしましょう。

» 2007年12月07日 15時00分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

 自分一人で進めている仕事を油断せずにやり抜くには

 コツ:タイマーを頼りに仕事をする


 前回は、「自分との約束」を守るための、世の中のイベントを仕事の締め切りとして機能させるという方法をご紹介しました。ポイントは「負の罰」、すなわち当然受けられるはずのメリットを受けられないことで生じるペナルティをうまく活用することでした。

 とはいえ、問題編にもあったように、ペナルティがあってもちょっとしたスキがあれば、いとも簡単に脱線してしまうものです。

 そこで、今回は「自分との約束」を守ることについてさらに一歩踏み込んで、ペナルティがかかっている中で油断せずにやり抜くための具体的な方法について考えてみます。

「自分専用の時計」を用意する

 自分で設定したものであれ、締め切りが迫っている状況というのは、いやが上にも集中力が高まり、仕事のスピードもアップするものです。忙しく手を動かしながら、ときおり時計に目をやり、締め切りまでの残り時間をたえず確認しようとします。

 こうすると、刻々と過ぎていく時間を強く意識することができるため、無駄な作業を避けるようになり、結果としてスピードアップが実現するわけです。

 でも、実はこのプロセスにも無駄な作業が含まれています。それは「時計を見る」という行為です。

 時計のいいところは客観性がある点です。例えば、「10時10分」は誰が見ても「10時10分」です。でも、今抱えている仕事を「11時30分」までに提出しなければならない人にとっては「残り80分」と表示してもらったほうが都合がいいでしょう。

 なぜなら、時計を見るたびに残り時間を頭の中で計算する手間が省けるからです。例えば、時計を見た瞬間に次のような自問自答が頭の中で交わされるでしょう。

 「うわ、もう10時10分か!」

 「……でも、それって、自分の今の状況にとってはどういう意味だろう?」

 「あ、あと80分で仕上げないといけない、という意味か……」

 「ということは、あと3ページだから、1ページあたり25分とすると……推敲には5分しかかけられない?」

 もちろん、毎回このような冗長な自問自答はしないかもしれませんが、少なくとも「10時18分って?」「10時50分ということは?」などといった質問にさらされることにはなるでしょう。

 本来は目の前にある仕事に投入すべきエネルギーが、こうした質問に対応することで、あるいは計算をすることで浪費されていってしまうのです。

 つまり、時計を見るたびに一定の負荷がかかるのです。一回一回はちょっとした負荷かもしれませんが、それが積もり積もってストレスになる、ということはあるでしょう。締め切りに追い立てられる仕事をした後はどっと疲れが出てしまうものですが、その原因の1つにはこのストレスがあると考えられます。

 そこで、活用したいのがタイマーです。現在時刻しか教えてくれない時計と違って、タイマーは、自分が抱えている締め切りまでの残り時間を教えてくれます。つまり「自分専用の時計」を使うことになるわけです。

「やらされ仕事」を「やる仕事」に変えるために

 いうまでもなく、タイマーを活用するには、目の前の仕事を終わらせるのにどれだけの時間がかかるのかを見通す必要があります。さもなければ、タイマーをセットすることができないからです。

 単純に誰かが設定した「締め切り」に合わせて残り時間をカウントダウンさせても、それは「自分の時間」ではない、もっといえば、「自分の仕事」とはいえないでしょう。どちらかといえば「やらされ仕事」になってしまいます。自分で「経験的にこれぐらいは必要だ」と時間を見積もることができて初めて、その仕事は「あなたの仕事」になり、それを終えるまでの時間は「あなたの時間」になるのです。

 そして、「負の罰」というペナルティはもともとあなた自身で設定したものですから、根底には「あなたの時間」が流れています。

 自分で時間を見積もることと「負の罰」を設定することは、いずれも「やらされ仕事」を「やる仕事」に変えるために必要な手続きであるといえます。

 まとめると、ポイントは次の2つになります。

  1. 「みんなの時計」(普通の時計)ではなく「自分専用の時計」(タイマー)を使う
  2. 仕事の所要時間を自分で見積もる

 この2つを守ることによって、時間をリソースとして“所有”することができるようになります。お金を大切にするのは「自分のお金」という所有感があるからでしょう。同様に、時間についても所有感を持つことができれば、自然と「無駄なく使おう」という意識が生まれるはずです。それが、油断を防止する上で役に立つわけです。

筆者:大橋悦夫

1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタリハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』、近著に『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』がある。


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