LCCの歴史を検証し、未来を展望する秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(1/4 ページ)

» 2014年05月09日 10時30分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

 まだまだ課題も多いものの、LCC(Low Cost Carrier:格安航空会社)は日本でも確実に定着しつつある。LCCは格安での旅を実現しただけでなく、人々の価値観やライフスタイルをも変え始めたと言っていい。では、そもそもLCCはどこでスタートし、世界にどう広がっていったのか? その歴史を振り返ることで、航空の近未来が見えてくる。

飛行機と空と旅 関西国際空港を拠点に国内各都市や近隣のアジア諸国に翼を広げるピーチ・アビエーション

LCCの先駆けはサウスウエスト航空

 シートを立派なものに付け替え、機内食も街のレストラン並みに豪華に。高級ホテルのサービスをお手本に客室乗務員の教育にも力を入れる。フルサービスを提供する大手エアラインが他社との差別化を図ろうと競争をエスカレートさせていた当時、まったく逆の取り組みに注力するエアラインがあった。1970年代に登場した米国のサウスウエスト航空だ。

 同社は、提供するサービスを最小限にとどめることで徹底してコスト削減を進めた。ネットワークキャリアと呼ばれる大手がハブ空港を中心に路線網を拡大し、ハブ空港間は効率のいい大型機で輸送していたのとは反対に、サウスウエスト航空は短距離路線で小型機による多頻度運航を続けて運航や経営を単純化。目的地でのターンアラウンド(折り返し)に大手が1時間前後をかけていたのを、15〜20分に切り詰める。その結果、各社が1日に4〜5便運航していた国内の短距離路線でサウスウエスト航空は7便も飛ばすようになり、たとえ乗務員の人件費や機材の購入費は大手と変わらなくてもフライト当たりのコストを大幅に削減することに成功した。

飛行機と空と旅 ボーイング737のみで運航を続けるサウスウエスト航空(撮影:チャーリィ古庄)
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