空港で旅客機を誘導する「マーシャラー」という仕事秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(1/3 ページ)

» 2013年12月25日 12時30分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

 国内でも海外でも、このところローカルな空港に降り立つ機会が多い。着陸後、駐機スポットに向けて地上走行する機内の窓からつい目を向けてしまうのが、マーシャラーと呼ばれる人たちの仕事ぶりだ。今回は、空港のランプエリアで旅客機を誘導する専門職──マーシャラーたちの仕事に密着してみよう。

飛行機と空と旅 グランドハンドリング業務の中でも高度な技術が要求されるマーシャラー

最近は女性マーシャラーの活躍も

飛行機と空と旅 実機との間隔をつかむ訓練も欠かせない

 無事に滑走路に着陸した旅客機は、速度を最小限に落としてゆっくりと旅客ターミナルに向かう。誘導係が送る合図にしたがって、前輪は地面に引かれたライン上をきれいに進み、やがて所定の位置にぴたりと停止した。

 これは空港で必ず見かけるおなじみのシーンである。誘導を行っているのは、空港グランドハンドリングスタッフの一人であるマーシャラー。「自分が描いたラインのイメージ通りに誘導できたときの、機体との一体感が最高です」と、パドルを手に若手マーシャラーのNさんは私に語った。

 空港での数あるグランドハンドリング業務の中でも、マーシャラーは“花形職種”のひとつだ。パドルを握り、到着した旅客機を滑走路からスポットへ誘導していく姿を見ていると、この仕事が特殊技能を要するものであることが理解できる。「1人でできるようになるまで半年以上かかりました」とNさん。日系エアラインのグランドハンドリング業務を受け持つ彼は、その他の空港業務もこれまでいろいろ経験してきたという。

 「貨物や手荷物のコンテナを機へ搭載する作業や、出発時に機体をプッシュバックするトーイング作業、パッセンジャーボーディングブリッジの脱着作業など、どれもいい経験になりました。業務に必要な技術は先輩社員のもとで習得しますが、マーシャリング業務の場合は習熟にどうしても時間がかかりますね」

 パドルの基本動作はもちろん、実機との間隔をつかむための訓練も欠かせない。そのためにNさんは乗用車を使ったトレーニングなども率先して行ってきた。

 「旅客機とクルマでは大きさも速度も違いますが、クルマを使っての訓練は、空港で実際の旅客機を前にした感覚を養うために意外と効果があるんです。毎日、業務の合間に時間を見つけては、このトレーニングを続けてきました」

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