10秒チャージで電装品を1分動かす、アテンザ搭載の「i-ELOOP」(1/2 ページ)

» 2012年11月26日 15時45分 公開
[朴尚洙,MONOist]
MONOist

 マツダが2012年11月20日に発売した新型「アテンザ」は、排気量2.2リットルのクリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 2.2」と、マニュアルトランスミッション(MT)「SKYACTIV-MT」を搭載するセダンタイプのモデルで、リッター22.4キロというハイブリッドカー並みの燃費(JC08モード燃費)を達成している。排気量2.0リッターのガソリンエンジンと自動変速機(AT)を搭載する従来のアテンザのJC08モード燃費がリッター13.4キロだったのに対して、67%もの燃費向上を果たした。

 この良好な燃費には、SKYACTIV-D 2.2や軽量のSKYACTIV-MTの効果もさることながら、全モデルに標準搭載した新開発の減速エネルギー回生システム「i-ELOOP」も一役買っている。マツダが東京都内で開催した新型「アテンザ」の発表会で、i-ELOOPの詳細について説明があったので紹介しよう。

アテンザ セダンアテンザ ワゴン (左)アテンザ セダン(右)アテンザ ワゴン(クリックで拡大)

「i-stop」を含めて10%の燃費向上効果

 i-ELOOPは、燃費向上のための電気デバイスの導入を段階的に進めるという、マツダの「ビルディングブロック戦略」の第2段階に当たるシステムである。

ビルディングブロック戦略 マツダのビルディングブロック戦略。i-ELOOPは第2段階に位置付けられている(出典:マツダ)

 蓄電デバイスとして、鉛電池やニッケル水素電池、リチウムイオン電池などの二次電池よりも電力を素早く充放電でき、繰り返し使用しても劣化が少ない電気二重層キャパシタを採用した。1回の減速で二次電池を使った場合よりも多くの電力を回収できるので、ハイブリッドカーのように大出力のモーターや大容量の二次電池を持たない乗用車でも、高効率の減速エネルギー回生を行えるようになるという。

i-ELOOP 電気二重層キャパシタ(左)と二次電池の比較。物理反応で充放電する電気二重層キャパシタを「物理電池」、化学反応で充放電する二次電池を「化学電池」と呼ぶこともある(出典:マツダ、クリックで拡大)

 i-ELOOPの概略については、2011年11月開催の「東京モーターショー2011」で発表した。電気二重層キャパシタのほかに、新たに開発した出力電圧を12〜25ボルトの範囲で変えられるオルタネータ(小型発電機)や、電装部品に供給する電力の電圧を12ボルトに降圧するDC-DCコンバータなどで構成される。

i-ELOOP i-ELOOPのシステム構成。電気二重層キャパシタ、可変電圧オルタネータ、DC-DCコンバータ、i-ELOOPによる回生量や電気二重層キャパシタの充電量を示すメーターなどから構成されている(出典:マツダ、クリックで拡大)

 i-ELOOPでは、走行中にアクセルをオフした瞬間から、オルタネータによって最大で電圧25ボルト/電流200アンペアの電力を出力して、数秒で電気二重層キャパシタを満充電にする。電気二重層キャパシタに蓄えられた電力は、DC-DCコンバータで12ボルトに降圧して、カーエアコンやカーオーディオをはじめとする電装品を動作させたり、鉛電池を充電したりするのに利用できる。

i-ELOOP i-ELOOPの動作イメージ。上の図はアクセルをオフした場合で、下の図はアクセルをオンした場合である(出典:マツダ、クリックで拡大)
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