僕達、彼女はいないけど趣味と仕事で充実してるし!――『僕達急行 ‐A列車で行こう‐』あの映画ざっくりレビュー

» 2012年04月11日 08時00分 公開
[櫻井輪子,Business Media 誠]
ざっくりレビュー

 『僕達急行 ‐A列車で行こう‐』はざっくりいうと、血中鉄分濃度が高くて女の子の扱いは苦手な小町くんと小玉くんがゆるーく仲良くなって、ゆるーく一緒に乗り鉄とかして面白い出会いとかあって、鉄っちゃんつながりで仕事はばっちり! だけど恋は……っていう話。

ざっくりレビュー

 2011年暮れに亡くなった森田芳光監督の遺作。オリジナル脚本の『家族ゲーム』や『(ハル)』が代表作の森田監督、その遺作となったこの映画も監督オリジナルの脚本作品となった。

 監督自身、“鉄っちゃん”だったようで、全編鉄分濃度の高い作り。登場人物の名前はすべて列車に由来するものだし、鉄道マニアの細かい区分だとかまで説明していて、あれ、これってタモリ倶楽部? やたらと挿入されるローカル列車のショット、部屋いっぱいの鉄道模型、普通に聞いてると聞き流しちゃう鉄道豆知識&鉄っちゃんの蘊蓄……などなど鉄道マニアは必見!

 小町くんの勤める大手建設会社を中心に据えると昭和のサラリーマン映画のようなノリが楽しい。松坂慶子演じる社長が博多に出張するくだりは森繁の『社長漫遊記』? といった趣きで、三丁目のなんちゃらよりもずっと昭和っぽい。そして、小さな鉄工所の跡継ぎの小玉くんと小町くんのゆる〜い友情と趣味が合う者同士通じあってる空気感が見ているほうにも伝わって実に居心地良い映画に仕上がっている。森田脚本にありがちな「日常会話でそんなこと言う人いる?」っていう素っ頓狂なセリフの数々も楽しくて、血中鉄分濃度が高くても低くても楽しめます。

あらすじ

鉄道好きの小町くんは、大手建設会社のぞみ地所に勤めるサラリーマン。ある日、ローカル列車デートで女の子にフラれたところを、小さな鉄工所の二代目小玉くんに目撃される。ひょんなところで再び出会い、鉄道好きという趣味が一致する2人はすぐに意気投合、鉄道の話や女の子の話など、何でも話せる仲になる。

小町くんがのぞみ地所の博多支店に転勤。つき合ってるのか微妙なあずささんに転勤の話をすると「左遷ね」と言われるが、小町くんの心は九州の鉄道のことでいっぱいだ。小玉くんはお見合いして、ちょっといい感じになった大空さんにフラれ、傷心を癒すために青春18きっぷで博多にやってくる。休日に2人で列車の旅をしていたとき、筑後さんに出会う。筑後さん自慢の鉄道模型の配線を直してあげる小玉くん。3人は1日中、筑後さんの鉄道模型で遊ぶのだった。

ちょうどそのころ、のぞみ地所東京本社の北斗社長が博多の食品会社との取引で博多に来ることになり、接待の場に呼ばれた小町くん。取引先社長に挨拶をしにいくと、そこには筑後さんの姿があった。

櫻井輪子(さくらい・わこ)

映画好きが高じて、コラムを書いたりもするイラストレーター。『WOWOWマガジン』『問題小説』『てぃんくる』などでイラストコラムを執筆。『Tokai Walker』の金子裕子さんのコラム「セレブ診療所」にコマ漫画を付けている。過去には『DVD&ビデオでーた』でビデオレビューのイラストコラム、『DVDでーた』で記者会見をレポするコラム『現場から櫻井輪子でした』を連載。

著書に『「へのへのもへじ」から始める 世界一カンタン! イラスト練習帳』がある。公式サイト「SakuraiWako'sめカラうりぼう」。


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