搭乗機は旅客ターミナルを離れ、誘導路を滑走路に向かってゆっくりと進んでいく。そんなときに窓から外を見ていると、滑走路の末端に2ケタの数字やアルファベットが記されているのに気づくはずだ。
成田空港を例にとると、それぞれ「16L」「16R」「34L」「34R」というように。じつはこの数字、1本1本の滑走路がどの方角を向いているかを示している。真北を360、真南を180として時計回りに進み、真東は090、真西は270。表示されているのはその3ケタの数字(角度)の最初の2ケタをとったもので、この下の写真の「34」滑走路は340度の方向──つまり飛行機から見て真北から20度だけ西に傾いた滑走路であることを表している。
新しく空港をつくる場合、ただ土地が準備できたからといって、すぐに建設できるわけではない。その前の段階として空港周辺の風向きを徹底して調査する作業が必要になる。旅客機は翼に風を受けて揚力を発生させるため、真正面からの向かい風が吹くことがベスト。そこで空港建設の際には、数年間を費やして平均的な風向きや“春一番”など季節ごとの特性について厳密なデータをとり、その地域にもっともよく吹く風上に向かって滑走路を整備しているのだ。
先ほど私は、「34」滑走路が340度の“北北西”を向いていることを説明した。その同じ滑走路を、風の変化により反対側から“南南東”に向かって使用する場合には、それが「16」になる。このルールを知っておけば、各地の空港で滑走路がどの方向を向いているかを誰でも簡単に理解できるだろう。
しかし、そうやって入念に風向きを調査して空港が建設されても、いつも一定方向からだけ風が吹くとは限らない。自然の力をコントロールすることはできず、ときには旅客機の離着陸に相応しくない横方向からの風の日もある。こうした風向きの変化に対応するため大規模な国際空港では横風に備えた滑走路の併設するケースも見られ、例えば羽田空港ではB滑走路が横風対策用として建設された。A滑走路とC滑走路が成田と同様に「34」から「16」への方向なのに対し、B滑走路は「22」から「04」へ延びている。ちなみに2010年秋にオープンした新しいD滑走路は、B滑走路とほぼ並行の「23/05」である。
なお、A滑走路とC滑走路のように同じ向きに並行して走る滑走路については、上の写真のように数字の下に添えられた「L」と「R」のアルファベットでそれぞれを区別。Lは左側(Left)の、Rは右側(Right)の滑走路であることを表していることも覚えておこう。
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