実用走行で約10%燃費改善、マツダの減速エネルギー回生システム

» 2011年11月25日 19時20分 公開
[岡田大助,Business Media 誠]

 マツダは、キャパシターを活用した減速エネルギー回生システム「i-ELOOP(アイ・イーループ)」を発表した。同社によれば、キャパシターを蓄電器に採用する乗用車用減速エネルギー回生システムは世界初。2012年から市販車に搭載していく。

ガソリンを使わずに、減速時に電力を細かく稼ぐ

マツダ キャパシター(画像をクリックすると拡大します)

 一般的なクルマはエアコンやオーディオなどの電装品の増加により、ガソリンエンジンの動力のうち10%をオルタネーター(発電機)による発電に使っている。これは、ガソリン代の10分の1を電気代として使っていることに等しい。また、オルタネーターを使うことでエンジンに負荷がかかり、トルク面でも損をしている。

 i-ELOOPでは、通常走行時にはオルタネーターを空転させることでエンジンの負荷を減らし、アクセルオフやブレーキを踏んだときなどのガソリンを使わない減速時のエネルギーで発電を行う。ひんぱんに加減速がある実用走行で約10%の燃費改善が期待できる。

 電流センサーによってバッテリーの残容量は監視しており、通常は発電しない高速道路での巡航などでは必要に応じて走行時にもオルタネーターをまわせるようになっている。しかし、マツダ 車両開発本部 車両システム開発部主幹の高橋正好さんによると、「一定の速度で走り続けていても、アクセルをオフにすることはあるはず。高速走行でアクセルオフをすれば、一瞬でキャパシターは満充電になる」という。

バッテリーはポリタンク、キャパシターはバケツ

 具体的なシステムは、既存のものから電子回路だけを変更した12〜25ボルト可変電圧式回生オルタネーターで発電した電力を、低抵抗電気二層式キャパシターに充電。ここから最大25ボルトから12ボルトへ変換するDC-DCコンバーターを介して、電装品の電力として使ったり、高寿命鉛バッテリーへとチャージしたりする。

マツダ i-ELOOPの動作イメージ(画像をクリックすると拡大します)

 また、キャパシターの特性として回生したエネルギーを瞬時に蓄えるだけでなく、繰り返し使える点にも着目。数百万回の充放電が可能だ。

「例えるならばバッテリーはポリタンク。大きな容量を溜められるが、間口が小さいためちょっとずつしか溜められない。一方、キャパシターはバケツ。容量は小さいが数秒でドンと溜められて、ちょろちょろと使える」(高橋さん)

 i-ELOOPは、東京モーターショーに出展する中型セダンのコンセプトカー「マツダ 雄(TAKERI)」に搭載されている。キャパシターは左フロントタイヤ前に、DC-DCコンバーターは左前席下に設置。キャパシターとDC-DCコンバーターにより約8キロの重量増となるが、電装品の消費電力は増加傾向にあるためクルマ全体として燃費は改善されるという。

マツダ マツダ 雄(TAKERI)(画像をクリックすると拡大します)

 i-ELOOPは、intelligent(賢く、無駄なく)なEnergy(エネルギー、電気)LOOP(循環)を意味しており、マツダの環境技術戦略「ビルディングブロック戦略」のステップ2に位置付けられている。

 同戦略は、SKYACTIV技術によるクルマ自身のベース技術アップのうえに、2015年までに段階的に電気デバイスを組み合わせていくもの。すでに、ステップ1のアイドリングストップ技術(i-stop)は普及段階にあり、現在はステップ3のモーター駆動(ハイブリッドカー、EV)を目指している。

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