第10鉄 7月17日運行開始! 飛鳥山に登場した“新しい乗り物”とは杉山淳一の +R Style(1/3 ページ)

» 2009年07月11日 04時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
飛鳥山公園のニューフェース登場

 6月の梅雨の晴れ間。電車の窓から気になる物体を発見し、思わず王子駅で電車を降りて確かめた。王子駅に隣接する飛鳥山公園にゴンドラのようなものが見える。近づいて予感は当たった。嘉穂(かほ)モノレールだ。

 ついに東京都内に嘉穂モノレールが誕生した。しかし残念ながらまだ工事中。取材した時点では今にも動きそうだったけれど、乗り場付近の工事が最後の仕上げに入っていた。乗れないならせめて写真でも……とカメラを向けると、警備員のおじさんが「こういうの、好きなの?」と話しかけてきた。「はい。これ、嘉穂モノレールですよね?」と聞くと「へぇ、よく知ってるね。昨日まで嘉穂製作所さんが作業していたよ」と教えてくれた。運行開始は7月からだという。

今回のルート(GoogleMapsで筆者による地図のコメントと説明を確認できます)

全国で急増中の嘉穂モノレールが都内の公園に誕生

 嘉穂モノレールは数年前から鉄道ファンの間で話題になっている。嘉穂製作所によると、1号機のデビューは1990年で、設置場所は愛媛県の松軒山(しょうけんやま)公園だった。それからもう20年近くも作り続けられ、今年3月までに国内海外合わせて145基の実績がある。

 その存在が鉄道ファンに広まったきっかけは、2000年に青森県深浦市の「ウェスパ椿山」に設置されたスロープカーだった。鉄道ファンに絶景で知られる五能線の深浦駅で降りると、すぐそばから展望台へ向かうスロープカーに乗れる。あの妙な乗り物はなんだ。モノレールらしいけれど、鉄道と考えていいのか――鉄道ファンにとって、自分たちの趣味の定義を揺るがしかねない大問題となっていた。

 結論から言うと、嘉穂モノレールは鉄道ではない。「鉄道事業法」によれば、鉄道とは「自社保有の施設を使って人やモノを運んで料金を頂く事業」である。この点で東京モノレールも大阪モノレールも北九州モノレールも鉄道と定義される。そして設置には国土交通省への届け出が必要になる。しかし嘉穂モノレールの場合、人やモノを載せるけれども、それは運営主が保有する敷地内であるから、「運ぶ」には該当しない。つまり「エレベーターや遊園地の乗り物と同じ」とみなされるようだ。確かに飛鳥山のモノレールも公園の敷地内だ。しかも料金は不要。エレベーター感覚の乗り物である。スロープカーと呼ばず、斜行エレベーターと呼ぶところもあるそうだ。

鉄道ファンも注目の嘉穂モノレール(左)。運行開始は7月17日から(右)

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