JR鶴見線は、東京近郊のユニークなローカル線として知られている。本線はたった7キロメートル。さらに1.7キロと1.0キロの支線が2つ。総延長9.7キロながら、基点の鶴見を含めれば終着駅が4つもある。中でも海芝浦は「外に出られない駅」としても知られており、鉄道雑学本の定番になっている。
距離は短いけど奥深い――今週は、そんな鶴見線に乗ってみよう。
JR鶴見線は横浜市鶴見区の鶴見駅を基点とする。本線はいったん海沿いへ出て、工業地帯を北上して川崎市に至る。東京駅から鶴見駅までは京浜東北線で約30分。車窓に独特の景色が展開するから、忙しくて遠くに出かけられない人も、たっぷり旅をした気分になれる。
今回は鶴見のすこし手前、川崎駅から始めよう。川崎駅から南武線に乗り、次の尻手駅で降りる。尻に手なんて痴漢の巣窟のような名前の駅だなあ、とニヤニヤしつつ、ホームの反対側から出る2両編成の電車に乗ろう。この電車も南武線の仲間で、浜川崎支線と呼ばれている。東海道線を超え、京浜急行の赤い電車を見下ろすと八丁畷駅。
次の川崎新町駅は、何本も並んだ貨物線の中にある。この路線は京浜工業地帯の貨物線の出入口の1つだ。鶴見線の旅客営業の出入口を鶴見だとすると、浜川崎支線は貨物営業の出入口になっている。浜川崎支線の終着駅は浜川崎駅。ここで鶴見線と接続する。
「鶴見線と接続する」と言っても、つながっている線路は貨物線だけだ。なぜか旅客駅は別々で、細い道路を隔てている。鶴見線が開業当初は私鉄だったという名残かもしれない。浜川崎駅はどちらも無人駅で、Suicaのタッチセンサーが置いてある。ただし、電車を乗り継ぐ場合はタッチしてはいけない。タッチすると運賃が通算されず、割高になってしまうからだ。それは車内放送やタッチセンサー付近の掲示でも説明されている。ここが鶴見線の見所の1つ目「JR同士の乗り換えなのに駅の外に出なくてはいけない駅」である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング